「志貴さま、お目覚めください」


随分と、落ち着いた声が聴こえる。


「志貴さま。秋葉様が既にお待ちです。加えてアルクェイド様と弓塚様もご一緒にお待ちになっており、只今冷戦状態となっております」


言っている内容は、激しく声にそぐわない。


「志貴様、このまま起きて頂きませんと、一番に被害を被るのは志貴様になりますが、よろしいですか?」


―――よろしくないに、決まってます。


「よろしいですね…。それではその旨、秋葉様にお伝えして参ります」
「ま……待って。起きる、起きるから…。ちょっと、待って…」
布団の中でゴソゴソと身体を動かしてから、ボクは上半身を起こした。





「おはようございます、志貴さま」
「………おはようございます、翡翠ちゃん」
寝惚けた頭を覚醒に導きながら、かけられた挨拶に返事を返す。
ボクがペコリと頭を下げると、翡翠ちゃんもペコリとボクに向けて頭を下げてきた。

「それでは、お食事の準備をして参りますので、お着替えが済みましたら、食堂までお越しください」
「うん…。ありがとう、翡翠ちゃん」
「では、失礼します」
翡翠ちゃんの言葉を聞きながら、ゴソゴソとベットの上を這って床へ降りる。
扉の所で一瞬ペコリとこちらへ頭を下げてから部屋を出て行く翡翠ちゃんを横目に、ボクはパジャマのボタンを外しにかかった。








「うな〜」
「ん〜? おはよ〜、レン」
上半身を脱いで、ブラのホックを留めようと頑張っている所へ、後ろから声をかけられた。
レンはどうやらベットの下で寝ていたらしく、ゴソゴソとベットの下から出てきた。
そのままポンッと人型に変わり、ボクの背中に回る。

「おはようございます、マスター。あっ、そっちじゃなくてこっちです」
「ん〜。ありがとう、レン」
「いえ、これも使い魔の役目ですから……」
ボクがホックを留めるのに四苦八苦していると、レンが変わってブラを留めてくれた。
そのまま何故か背中をサワサワと撫でる。

「んんっ。こらっ、レン。いたずらはやめなさいっ」
「マスターのお肌はいつ触ってもスベスベですねぇ〜」
「こらっ。人の話を聞きなさっ、ふひゃぁっ!」
突然背中に感じた生暖かい感触に、思わず背筋を仰け反らせる。
その生暖かいモノはボクの背中をネットリと這いずり回っていた。

「ん、マスターの寝汗の味…。おいしい…」
「あっ、や、やだっ! レン、ちょっと、はんっ!」
背中をピチャピチャと舐めるレンを振りほどこうと上半身を揺するが、レンはギュッと抱きついて離れない。
前に回されたレンの右腕が、ゆっくりとお腹を伝って下がってきた。

「あっ、ふぁっ、あぁっ。レン、ダメ…」
「ふふっ、マスター。最近私に構ってくれないので今日は少しイジワルな気分なんです」
「な、なにいっ。はっ、あ、ああ…」
チロチロと背中を舌が這い回り、下腹部をレンの小さな指が這い回る。
その感触に、段々自分の身体が熱くなるのが判って、かなり恥かしくなってきた。
なんだか太股がムズムズしてきたので太股を擦り合わせていたら、レンの手がパジャマのズボンの中に入ってくる。

「やっ! ちょっと、レン!」
「あっ、マスター。こんなに…」
「あぁっ! やっ、だめぇ……」
ズボンの中に入ったレンの小さな手が、ギュッとボクのモノを掴む。
その感触に、思わず腰を引いてボクは前屈みの体勢になった。
レンはボクの言う事を訊かず、その手でボクのモノを優しく揉んでくる。

「あっ、やっ…。や、やめて、おねがい…」
「ですが、マスター。こちらはこんなに大きく」
「んあっ! そっ、そんなの。朝だからに決まって…」
ボクが言葉を言い終わらない内に、レンはボクのモノをギュッと掴み、そのまま上下に手を動かしだした。
その感覚に、ボクは背筋にゾクゾクと快感の波が走るのを感じた。

「んああっ、だめぇ…。こ、擦らないでぇ…」
「マスター、更に大きくなってきてますよ」
「い、いや…。言わないでぇ、お願い…」
レンの言葉に自分の顔が熱くなるのが判る。
ボクは首を左右に振り、自分の手で自分の顔を隠す。
すると、更にレンは速さと握る強さを強めてボクのモノに刺激を送ってきた。

「あああっ! ダメ、だめっ! そ、そんな強くしないでぇ」
「マスターは、刺激が強いのがお好きでしたよね」
「うそっ、言わないでよぉレン…」
「ですがマスター、先のほうがこんなに濡れてますよ?」
いつの間にかレンの左腕までズボンの中に入り、右手でモノを擦りながら左手の指で先をくにくにと刺激し始めた。

「んあぁっ! やだっ、先っぽダメぇ…」
「こんなに濡れて…」
シュッシュッとモノを擦って伝わる快感が背中を駆け上る。
レンの手の動きに、段々下腹部の奥のほうから何かが集まってくるのが判った。

「やっ、ダメっ! そんな、そんなにしたら…」
「マスター…。ヒクヒクして、出てしまいますか?」
「うん、うんっ。でちゃう、でちゃうの!」
「よろしいですよ…。私の手で、出してください」
レンはボクの耳元でそう言うと、一層擦る強さを増して、ボクのモノを刺激する。
先をいじっていた指の腹で出口をぷに、と刺激した。

「あぁぁっ! そこはやぁっ! でちゃう、でちゃうぅ!」
段々ボクの膝が言う事を効かなくなり、ガクガクと震える。
腰に集まった何かが、ボクのモノを駆け上がってくる感覚に、意識が奪われた。

「あああああっ! いくぅっ、でるぅぅっ!」
「えいっ」
先端に集まったものが噴出すギリギリの所で、レンがボクの根元をギュッと絞める。
ギュゥゥッと絞められ、出そうだった何かがピタリと止まってしまった。

「あ、ああああっ。んんんんうぅぅ……」
途端、膝の震えが大きくなり、胸がギュゥッと絞めつけられた。

「ふふっ、マスター、ピクピク震えてますよ、こちら…」
レンは嬉しそうに言いながら、ボクの根元をギュッ、ギュッと締め付けた。

「あああぁぁ、出ない…、出てこない……」
「はい、止めてしまいました」
「やぁ、ああああ…。出ない、でないの…」
ボクの足がフラフラになり、どうにも立ってられない。
股間に意識が集中してしまい、思わず尻餅をついてしまいそうだ。
レンに後ろから支えられ、立っているのがやっとの状態。
なのに、レンが背中を支えるのをやめてしまった。

「あっ…。ダメ、倒れ」
「お支えします、マスター。こちらへ…」
後ろに倒れてしまいそうになったボクを、脇に手を入れてレンが支えてくれた。
ボクはレンに支えられながら、先導されベットの上にポスッと仰向けに倒れた。

「随分と、ズボンをお汚しになってしまいましたね」
倒れたまま声の方向を見ると、レンがボクの下半身を隠すズボンを見つめていた。
そこには、ズボンを突き上げるモノと、股間部分を覆う薄いシミが見て取れた。
それに気付き、思わず顔を背ける。

「ダメ…。お願い、見ないで……」
「大丈夫ですよ。でも、これ以上お汚しにならないよう、脱がせてしまいますね?」
「だ、だめ…。脱がせないで……」
ボクの制止の声を聴かず、レンはボクからズボンをスルスルと脱がしてしまった。
それと一緒に、ボクの股間を隠していたショーツも剥ぎ取られる。
股間が外に出て、自分のモノがひんやりした空気にピクリと動いたのが判った。

「マスター、お苦しそう…。レンの、所為ですね…」
ボクのモノを眺めてそう言うと、レンは再びボクのモノを両手で扱き出した。

「やぁぁ、レンっ! さっき、さっき出そうだったの…」
「えぇ、知っております、マスター」
「だから、だからぁっ! すぐ、すぐ出ちゃうのぉ!」
「はい、判ってます、マスター」
ボクのモノを扱き上げながら、レンが返事を返す。
両手の力加減と刺激が段々強くなり、溜まっていたモノがもう溢れ出しそうだった。

「やぁぁっ! でるっ、でちゃうっ!」
ビクリビクリと震えているであろうモノから、再び射精しそうな快感がボクを襲う。

「ふふっ、まだですよ」
だが、出そうだったものは、再びレンによって、根元を締め付けられ止まってしまった。
突然止まってしまい、ボクの胸が再びギュッと締め付けるように苦しくなる。

「くぅぅぅぅっ…。せ、切ないよぉ…」
胸の苦しさを訴えるようにレンを見て、ボクはレンに言う。
だが、レンはそれを無視して、完全に射精が止まったソレの締め付けを解いて先端に口付けをした。
チュッ、という音と、レンの唇の温かさ、柔らかさが快感になって背筋を駆け上ってきた。

「はぁぁっ! うんっ、ううんぅっ」
「んっ……、はぁ…。マスター、先端がこんなに膨れて…」
「うあぁっ! レン、れんんっ!」
口付けは次第に激しくなり、レンは舌でモノを舐めまわし始めた。
その刺激に、ボクのモノは簡単に限界を迎える。

「レンぅっ! 出る、出る出るっ!」
「……んっ、はぁ…。マスターの精液、おいしい」
「あああっ! でるぅぅっ!」
「まだ、まだです…」
再びレンが、限界を迎えたモノをギュッと締め付け、出せなくなってしまった。

「ぐぅぅぅっ! やぁぁっ、切ない、苦しいよぉ…」
「ふっう…。マスター、可愛い…」
レンはボクの根元を締め付けながら、頬を赤く染め、潤んだ瞳で見上げてくる。
その視線にゾクゾクと背筋が震えた。
ボクがレンに一瞬見惚れていると、レンは締め付けていた指を離し、今度はモノを口に含みだした。
ジュブ、と湿った場所に入った感触に、身体全体が震える。

「あっ、はあああぁっ! うわぁっ! ダメぇぇっ!」
「んっ、ふっ、んんっ、ふっ、んくっ」
レンの息遣いと連動して、ジュブ、ジュブと水っぽい音が聴こえてくる。
下腹部から伝わる激しすぎる刺激に、ボクは両手で顔を覆い頭を左右に激しく振った。

「あああっ! 出る、いくううっ!」
「んっ、くっ! …ふっ、んんっ」
「ぐぅぅぅぅっ! やああっ! そんな、そんなのダメぇっ!」
レンはボクの声に、口に含んだモノの根元をギュッと絞め付け、再び出そうなモノを塞き止めた。
そのまま口でモノの先を刺激し、もう片方の手で扱きたてる。
咥えた口の中では、出口を舌がチロチロと刺激していた。
柔らかい舌が出口を割って入り、中を直接刺激する。
それを覆う口がチューチューとモノを吸い、片手で扱きたてているのにもう片方の手で出るのを塞き止める。
出したいのに出せない。
出てこないのに出そうとする刺激に、神経がオカしくなりそうだ。

「やああっ! やめてぇっ! オカしくなっちゃうっ! おかしくなるぅぅっ!」
「ふんっ、ぷあっ…。では、イカせて差し上げますね…」
レンは一旦口に含んだモノを離し、ボクにそう告げる。
すると、再びモノを口に含んで刺激を始めた。
扱きたてていた片手が、ボクの女の子に触れる。

「んっ…、ふ…」
レンはモノを舐めながら、女の子の膣に細い指を一本ツプリと挿れてきた。

「はぁぁっ! そ、そっちは、女の子の」
「んんっ、んぷっ。はぁ…、もっと大きくなりましたね、マスター。こちらもビショビショ…」
「やああっ! 女の子、おんなのこでいっちゃうぅっ!」
「もう、イッてしまうんですか? マスター」
「やだぁぁっ! そっちはやだっ! そっちでイきたくないのぉっ!」
舌でボクのモノを刺激するレンに、ボクは涙を流しながら訴える。
だが、レンの指は確実にボクの女の子を刺激して、絶頂へと押し上げていった。

「やああっ! イクッ、いくいくいくっ!!」
「マスター、イってよろしいんですよ」
「やだあぁっ! そっちはやぁぁっ!」
「レンに、マスターがイった姿を見せてください…」
レンはそう言うと、膣に入っている指をくに、と動かす。
その刺激で、頭の中で何かが破裂して、目の前が真っ白になった。


「やあぁぁっ! いっくぅ…、ああああああああっ!!」


途端、身体中がガクガクと震え、『私』は涎と涙を撒き散らしながら背筋を仰け反らせた。


「あっ…、はぁ…。マスター、可愛いです…」
レンの震える声を聞きながら、身体中を襲う快感の波に私は耐えていた。

「あああっ…。はぁぁぁ…」
押し寄せてきた波が引き、落ち着いてきても、私の胸の苦しさは増すばかりだ。
何だか哀しくて、涙が溢れてくる。

「くっ、うぅっ。うぇぇ…、せ、せつないよぉ……」
「…は、マ、マスター。な、泣かないでください」
「ふぇ、うぇぇぇ、切ないの、苦しいのぉ……」
「も、申し訳ありません、マスター。れ、レンがイジワルでした…」
「ふぇぇん、せつないのぉ…」
「わ、判ってます、判ってますマスター。レンも切ないんですよぉ」
泣き始めてしまった私に、レンは慌てて早口で告げてくる。
なんだか近づいてきたレンの顔にホッとして、私はレンをギュッと抱き締めた。

「レンン…。切ないのぉ」
「はい…、マスター。一緒になりましょう…」
レンはそう言って、私に優しく口付けてくれた。
その暖かさに身体中の力が抜けてしまう。
すると、レンが私の腕からスルスルと抜け出て、下腹部にペタリと座り込んだ。

「あぁ…。マスターの、こんなに熱い…」
そのまま股間でスリスリと私のモノを刺激する。

「あぁ、レン、熱い…」
「はい…。マスターのお姿を見て、レンは何度か達してしまいました…」
レンはそう言って、黒いローブとスカートを脱ぎ捨て、私にテラテラと光る秘所を見せる。
その光景に頬がぽぅっと熱くなり、心臓が早鐘を打つのがわかった。
期待に躍る胸の苦しさに、私は再び涙が出そうになる。

「レン…、お願い…。おかしくなっちゃう…」
「はい。もう限界ですね…。レンの内で、放ってください」
私の顔を見て、レンは優しく笑うと、ピクピクと動く私のモノに手をかけた。
それをそのまま押え、自分の入口にあてがう。

「つぅっ!」
「あっ、はぁ…。おっきい、マスター…」
あてがわれただけの刺激に私は声を漏らし、レンは嬉しそうに呟いた。
そのまま、レンは腰をゆっくりと沈めていく。
ジュブ、ジュブリと濡れた秘所に押し入る快感に私は限界を感じた。

「あああっ! レン、でちゃうよぉぉっ!」
「まだ、まだです…。もっと奥まで、入って…」
私が訴えると、レンは一気に腰を沈めてきた。
ズンッと先端が最奥を突き上げる感覚と一気に押し入る刺激が背骨を駆け回る。

「ああああっ! くぅぅぅっ!」
「あっはあああぁ! おく…、おくまで…」
強烈すぎる刺激に、絶頂を迎えたはずのモノからは何も出てこない。
レンは口をパクパクさせてから、私の胸にポスッと倒れ込んだ。

「あ、はぁ…。も、申し訳ありません、マスター。レンは、達してしまいました…」
「う、うぅっ…。レン…、出したいのぉ…」
荒く息づくレンに、私は思わず訴えかける。
レンは私の胸で一息つくと、ゆっくりと顔を上げた。

「はい…。レンの膣で、達してください…」
レンはにっこりとそう言うと、ゆっくりと腰を動かし始めた。
ズッ、ズニュッと下腹部が音を立て、お互いを刺激する。

「はああっ、くぅぅっ! やだっ! 気持ちいぃ、気持ちいいよぉっ!」
「あんっ、あっ、あはぁっ! レンも、レンもっ!」
ジュプジュプと動く膣は、とてつもない快感を作り出す。
気が狂いそうな快感と、小さすぎるレンの身体が私を簡単に絶頂に押し上げた。

「やあっ! 出る、出ちゃうよぉ、レンっ!」
「出してっ、出してくださいマスターっ! レンの奥まで、マスターのをくださいっ!」
「ああああっ! だめぇっ! もう出るっ! いくっ、でるぅぅっ!」
「出してぇっ! いやあぁぁっ! 気持ち良すぎて、たすけて、たすけてますたぁぁぁっ!」
ギュッと私に縋り付いて来るレンを抱き締め、私は快感に身を任せる。
やっと放てると判っているのか、私のモノがギュゥギュゥと締め付けるレンの膣で最大限に膨張した。


「はあああっ! いっ…くぅあああああああっ!」
「ひゃあああっ! ああああああああっ!!」

ドクッ! ドクッ、ドクッドクッ…。


胸の切なさが解放され、私はギュッとレンを抱き締めた。
それに反応して、レンも抱き締め返し、私を暖かく包む。
繋がっているモノからはドクドクと精液がレンの中へ流れ込み、最奥を満たす。
レンも絶頂を迎えたのか、ギュゥギュゥとモノを絞め付け、背筋を仰け反らせて震えていた。

「あっ…、ああぁ……」
「かっ、はあぁぁ…。ますたぁ、離さないで…。たすけて……」
「レン…、レン…。気持ちよすぎて、おかしくなっちゃうよぉ、レン…」
「レンも…、レンもおかしくなりそうです、ますたぁ…」
今だドクドクと出続ける精液の感触に、私はおかしくなってしまいそうな恐怖を覚える。
お互いに身を寄せ合い、力一杯抱き合いながら、落ち着くのを待っていた…。








裸のままで抱き合い、お互い落ち着いた頃になると、頭も段々働いてくる。
途端、私は恥かしくなり、レンの顔を見ると頬が熱くなってしまった。

「あっ、だ、大丈夫? レン。苦しくなかった?」
「あっ、大丈夫です、マスター。気持ちよかったです…」
レンはそう言うと、ポッと頬を染めて俯く。
その仕草に余計恥かしくなり、私も俯いてしまった。
すると、視線の先に今だ繋がっている二人が見える。

「あっ、ご、ごめんレン。いい加減抜かなきゃね…」
「え? あ、そうですね…、少々名残惜しいですが…」
レンは少し残念そうにそう言うと、腰を動かし私のモノを引き抜こうとする。

「んっ…」
「くぅっ…、気持ち、いい…」
お互い動くと、やはり刺激が伝わり、快感が背筋を這い回る。
それを我慢しながら、私はレンから自分のモノを引き抜いた。

「あっ…。抜けちゃいました…」
「抜いたんだもん…。レン、もうおしまい」
「そうですね…。少々残念ですが…」
レンはそう言うと、心底残念そうに私を見つめる。
なんだか寂しそうに見えるその姿に、私はドキリとさせられながら慌ててフォローを入れた。

「あっ、そ、そんなに寂しそうにしないで…。私だって本当は…」
「そうですか、良かったです…ん? マスター?」
ボクの言葉に嬉しそうに微笑んでから、レンは『ん?』と頭にハテナマークを浮べて私に声をかけてきた。

「ん? どうかした? レン」
「えっ、いえ…。今、なんとおっしゃいました? マスター」
下着を着替えている途中で声をかけられ、作業を続けながらレンに答える。

「ん? そんなに寂しそうにしないでって」
下着を着替え終え、私は学校の制服をクローゼットから取り出す。

「いえ、その後ですが…」
横目でレンが着替えるのを見ながら、私も制服に袖を通し答えた。

「えっ? その後は…、私だって本当は…って」
「………えっと、今、なんて?」
何故か怪訝そうに私に言うレンに、制服のスカートを履きながら、私は再び答えた。

「いや、だから…。もう、そんな恥かしい事何回も言わせないでよ…」
そう答えながら、頬が熱くなるのを感じる。

「ま、ますたぁ? お願いですから、もう一度おっしゃって頂けませんか? 確か…、『私』と、おっしゃいませんでしたか?」
レンの眼を見開いた怪訝そうな表情に、私も怪訝そうな表情を浮べる。

「えっ? ……何か、変? 私は私でしょう?」
制服を着替え終え、クローゼットの鏡を見ながら手櫛で髪の毛を整えながら私はレンに答えた。

「あ…、ああ…、えっと…。も、もう一度」
「なに〜? レン。私何か変な事言った?」
後ろから聴こえてくる途切れ途切れの声に、私は手櫛を終えクルリとスカートを翻し問い掛けた。

「あぁ…、えっ? えぇっと…私、ですか?」
「へ? だから私は私でしょ? どうしたの? レン。変だよ?」


「「「えっ、ええええええええっ!!」」」


途端、部屋中に叫び声が木霊した。



「な、なによぉ〜、レン。…って、今レン以外の声が…」
正面で口をパクパクさせながら見つめてくるレンを見てから、私は他に声がした方向を眺めた。



「わ、私…。志貴が、志貴が、わ、私って……」
「こ、これは…。ど、どういう事なのでしょうか、姫君…」
そこには、ドアの隙間からこちらを眺める複数の眼があった。
その内の二つ、アルクェイドとメレムが、私を眺めて大きく目を見開いている。

「あ…。あぁっ! えぇっ!? なに、なんで皆居るのっ!!」
「あ、あは〜っ。ば、バレてしまいましたねぇ〜」
「え、えっと、その…。け、決して私はその、兄さんの情事に見惚れていた訳ではなく、そ、そうっ! その泥棒猫の制裁をっ!!」
「し、志貴さま…、その、お、お食事が…」
「志貴くんって、激しいんだぁ…、うふっ、うふふふふ…」
「うぅ〜っ、レンさん、羨ましいですよぉ〜」
何故かそこには、遠野家に在住するメンバーが全員集まり、ドアの隙間からこちらの様子を伺っていた。
しかも、何故かトリップしているメンバーの発言からすると。

「……ま、まさか…。の、覗いてた?」
「いっ、いえいえっ! そんな、志貴さんが悶え泣きしたりレンさんと抱き合って萌え〜だったなんて知りませんよぉ〜」
「バッ、バカッ! 琥珀っ!」
「はっ、はうぅっ! し、失敗してしまいました! 秋葉様申し訳ありませんっ!」
「ね、姉さんっ! いつも肝心な所で自爆する癖を治してくださいっ!」
「はうぅ〜、ごめんなさい〜翡翠ちゃん…」
どうやら、しっかりと覗かれていたらしい。
その事実に、私の顔は一瞬で熱くなってしまった。

その勢いで、思わず―――。




「……きゃっ、きゃああ〜〜〜〜〜っ!! チカンッ! エッチ! ヘンタイ〜〜〜ッ!!」



――――耳をつんざくような叫び声をあげてしまった。






次へ