「…………………。」
ジーーーーーーーー
――――――ていうか、絶対見られてるな、これ。
唐突に、勢い良く上半身を起こす。
――――――クラッ
少し眩暈がしたが我慢。
そして目を開ける。
「じーーーーーーーーっ。」
琥珀さんがカメラを構えていた。
「…朝っぱらからなんでしょうか、琥珀さん。」
「はい、おはようございます、志貴さん。」
「えと…だから、どうしたんですか?」
「いえ、お気になさらずにー。」
いつもの笑顔で笑う琥珀さん。
ふと、ベットから出ようと思い横を見ると、レンが寝ていた。
「――――――――あ。」
レンとの夢の中での行為を思い出し、顔が赤くなる。
「あら、志貴さん。どうかしたんですかー?」
いたずらっ子のように笑う琥珀さん…。
(………まさか…。)
ふと、気になる事が浮かび、琥珀さんに聞いてみた。
「…あの、琥珀さん……。」
「はい、なんでしょうかー?」
相変わらずカメラを向ける琥珀さん。
それには構わず質問をした。
「あのですね…、私、寝言、とか…、寝相、とか…。」
「はい、ばっちり記録してありますよー。」
「…記録って、まさか……。」
私があの夢を見ている間、その姿を全てカメラに記録されていたと悟った瞬間、私の顔から血の気が引いた。
「…それで、琥珀さん……。」
「まぁまぁ、とりあえず、見ますか?」
…この人は絶対私に見せたいんだ。
だが、絶対的な決定権を向こうが持っている以上、私は逆らう事ができない。
「はい…、みせてください。」
私は泣く泣く、そのカメラの映像を目にする事にした。
「…うわぁ………。」
「ふふ、どうですか? 良く撮れてるでしょう?」
「いや、良く撮れてるとかそういう問題じゃなくて…。」
案の定、そこに映っていたものは、寝言を言いながら一人レンと布団を抱き締めて身悶える私の姿だった。
私はとりあえず濡れた下着やパジャマから私服に着替え、琥珀さんからその映像を見せられていた。
昨日、この部屋に泊まったであろう人間はみんな雑魚寝をしている。
「はい、これで終了です。気持ちよかったですか? 夢の中は。」
悪魔のような微笑を湛えつつ、琥珀さんは一番聞かれるであろう質問を真っ先にしてきた。
「いや…、まぁ、それはその…。」
「あはっ、そうですかー。レンちゃん最近寂しそうでしたからねー。これで発散できたんじゃないですか?」
「まぁ、本人もそう言ってましたからね。発散はできたんでしょうけど。」
「とりあえず志貴さん、安心してください。志貴さんの異常に勘付いたのは私だけのようですからー。」
「はぁ、まぁそうでしょうねぇ。みんな寝てるし。」
「という事なので、今日一日の志貴さんの行動の決定権は私にあるという事で。」
…貴重な休日の過ごし方が、割烹着の悪魔の手に委ねられた。
「…わかりました。」
「はい、そういう事でー。とりあえず、みなさん起こしましょうか?」
「あぁ、そうですね。」
琥珀さんの意見に同意して、私達は手分けしてみんなを叩き起こす事にした。
「おい、秋葉。いい加減起きたほうがいいぞ。」
「…ん…ふぁ、あ、に、兄さんなんでっ!!」
「いや、なんでも何もここは私の部屋だろう…。」
「あ…、そうでした。昨日あのまま寝てしまったんでしたね…。おはようございます、姉さん。」
「あぁ、おはよう秋葉。寝顔可愛かったぞ。」
「なっ、も、もう。姉さんはいじわるする時本当に楽しそうな顔しますよね。」
「あぁ、だって楽しいからな。秋葉をいじめるなんて滅多にできないし。」
「それは姉さんの普段の行いの所為かと思いますけど?」
「まぁ、細かい事は気にするな。それより他の人を起こすのを手伝ってくれ。」
「あ、はい。確かにこの状態じゃ部屋の掃除もできませんしね。」
「じゃぁ先輩を頼む。私は弓塚を起こすから。」
「かしこまりました。」
私は隅っこで寝ている弓塚を起こしにいった。
「おーい、弓塚、朝だぞ朝。起きろー。」
「ん〜、もうちょっと、ねかせて…。」
「はぁ、典型的な低血圧か、こいつは…。ていうか半分吸血鬼だしな…。
おらっ、弓塚起きろーっ!!!」
弓塚の耳元で大声で叫ぶ。
―――――――バシィッ
「うわわわぁっ!! お、起きた起きた〜っ!!」
「――――――――っ!」
弓塚がいきなり顔を跳ね上げたお陰で、弓塚のトレードマークであるツインテールが目に入った。
もの凄く痛い。勢いがあったお陰で凄く痛い。とにかく痛い。
「あ、あれ? 志貴ちゃんどうしたの?」
「どうしたの? じゃねぇよ…。その髪、もの凄い凶器だな…。ほんと。」
「えっ? なんかしたの? 志貴ちゃん。」
「いや、どっちかっつ〜となんかされた感じ。」
「う〜ん、よくわかんないけど、おはよう志貴ちゃん。」
「…あぁ、おはよう弓塚。」
「あっ、もうみんな起きてるんだね、じゃぁ私が最後だったのかな。」
「…いや、もう一人いるだろうな。多分。」
そう言って私は、誰も使っているはずのない晶ちゃんのベットへ近づいていった。
「…やっぱいたか、こいつ。」
見ると、見回り当番のはずのアルクェイドが気持ちよさそうに寝ている。
「琥珀さん、ちょっと来てください。」
「はいはい、なんでしょうか?」
寝ていた翡翠を起こした後、簡単な掃除に取り掛かっていた琥珀さんを呼んだ。
「実は、ここにアルクェイドが寝てるじゃないですか。」
「はい、寝てますねー。」
「それでですね、こいつを起こすのにはちょっとしたコツがいるんですよ。」
「はい、そうなんですかー。」
「そうなんです。ですから、とりあえずこのベットには誰も近づけないようにしてくれませんかね…。」
「…はぁ、よく判りませんけど分かりました。要するにみなさんの注意を他の場所に引きつければいいんですね?」
「まぁ、簡単に言うとそういう事です。それじゃぁ頼みました。」
「はい、了解しましたー。」
そう言って、琥珀さんをベットから放した後、私はベットの周りのカーテンを閉めた。
「…さて。おーい、アルクェイド、起きろー。」
「………んー…。」
「…はぁ、おい、アルクェイド、起きろバカ。」
「…んー………。」
「まだダメか…。こらっ、アルクェイド起きろ。ここは晶ちゃんのベットだそ。」
そう言って、私はアルクェイドの上に馬乗りになり肩を揺らす。
「んー……あー、志貴ー。」
パチッと目を開けたアルクェイドは、案の定起きてすぐ私に抱きついてきた。
「こ、こらっ、だから毎回起こすたびに抱きつくなって言ってるだろ…。」
「んー、だって私吸血鬼なんだから朝弱いの当たり前でしょ。それを無理矢理起こすのが悪いんじゃん。」
「まぁ、そりゃそうだけどな、でもそれと抱きつくのと何の関係があるんだよ。」
「正当な労働には正当な報酬が原則でしょ。だからこれは私への報酬。」
そう言って、更にきつく抱き締めてくるアルクェイド。
「あぁ、わかった、わかったからいい加減放せ。」
「むー、志貴のけちー。」
「けちとかそういう問題じゃないだろうが…。」
「朝っぱらからなにやってやがるんですかこの不浄ものぉぉぉぉぉっ!!」
どこからともなくシエル先輩の華麗なストレートが飛んできた。
それを私から離れて避けるアルクェイド。
「む、なによ朝っぱらから。人の幸せの邪魔しないでくれる、シエル。」
「何が幸せですかっ!! 遠野君困ってるじゃないですかっ!!」
「いや、先輩…、とりあえず落ち着いて…。」
「遠野君、私は落ち着いてますよ。ただ私は毎回遠野君が起こす度にこのあーぱーが抱きついているという幸せ過ぎる寝起きを迎えているのが許せないだけですっ!!
そんな寝起き私だって体験したいですよっ!!」
「いや、先輩…、全然落ち着いてないでしょ。」
「へー、シエル、それって『嫉妬』って言うのよね。」
「なっ、なんで私が貴女なんかに嫉妬しないといけないんですかっ!!」
「だってシエル、独占欲強いじゃん。」
「な、な、な、なにを言いやがるんですか貴女はぁぁぁっ!!」
「ふっ、そんなパンチ当らにゃいよーだ。」
「くっ、このチョコマカとぉぉぉっ!!」
「甘いにゃーシエル。まだまだにゃー。」
シエル先輩のマシンガンジャブを軽やかに避けるアルクェイド。
ていうか朝から元気だなぁ二人とも。
「とりあえず、起きたしいいか。」
自分の中で簡潔にまとめてみた。
そういう事で、琥珀さん達と一緒に部屋の掃除に取り掛かる事にした。