「うぅ…、なんかゴワゴワするんですけど…。」
「あはー、それはしょうがないですよー。我慢です。」
「ふぅ…、でもなんか変な感触…。」
私は股にある違和感を意識して、心なし内股気味で歩いていた。


―――――コン、コン

「どうぞ、開いています。」
中にいる秋葉に促され、私達は秋葉の部屋へと入った。


「…なんでみんないるんだ…。」
中に入ると、秋葉達三人はもちろん、先輩や弓塚、晶ちゃんまでも部屋にいた。

「あらー、翡翠ちゃん、みなさんにお声をかけちゃったんですねー。」
「…はい、姉さんから志貴様について大発表があるという事でしたので、寮にいらっしゃる皆様にお声をかけました。」
「…翡翠、なんだその大発表って…。」
「違うのですか? 私は姉さんにそうお聞きしましたが。」
「…琥珀さぁん。」
「あ、あはは、まぁ、言葉のアヤというものですよ。」
「…それより姉さん、なぜそんなにモジモジしていらっしゃるんですか?」
「いや、これは…。」
「秋葉さま、まあとりあえず落ち着いてください。志貴さんもお座りください。」
「あ…、う、うん…。」
私は琥珀さんの横に正座で座り、翡翠から受け取ったお茶を一口飲む。

「それで、琥珀。一体なんなの? こんなに人数を招集して。」
「はい、驚かないで聞いて頂きたいのですが…。」
「……琥珀、それはそれほど衝撃を受ける話なの?」
「はい、恐らく皆様の予想できないお話かと…。」
声を潜め話す琥珀さんに、一同の視線が集まる。
ていうか、この人絶対楽しんでるな…。

「…それで、なんなの…。」
「はい、実はですね…。」
「実は…?」
「先ほど志貴さんがですね…。」
「姉さんが…?」
一同の視線が琥珀さんに集まる。
どこかで生唾を飲み込む音がした。

「先ほど、女の子になったんですよーっ!!」
ものすごい笑顔で言う琥珀さん。
一方他のみんなは…。

「…そ、そんなの見れば判るじゃないのっ!!」
秋葉の発言を聞いて頷く一同。
だが、琥珀さんは指を立て、『甘いですねー』と言いたげな顔をする。

「違うんですよ、そういう意味ではありません…。」
「な、なによそういう意味って…。」
「……っ!! ま、まさか志貴さまっ!!」
横にいた翡翠が、こちらを驚きの表情で伺う。
私はその顔を見て、ちょっと恥かしくなり、顔を赤くしてしまった。
一方、他の面々はまだ判らないという怪訝な表情をしていた。

「翡翠ちゃん、鋭いですねー。そうですっ!! 実は先ほど、志貴さまは初潮を迎えたんですよーーーーっ!!」
「・・・・・・・・・・・・」
一同、目を点にして私を見てくる。

「ほ、ほんとうですか、志貴さま…。」
やはり信じられないという顔で見る翡翠に、私は目を背けながら軽く頷いた。

「………ええええぇぇぇぇぇぇぇっっっっ!!!!」
一気にみんなが大声を上げる。

……あ、翡翠が倒れた。

「ほ、本当に本当なんですかっ!! 姉さんっ!?」
秋葉が顔をこちらに突き出し凄い形相で聞いてくる。

「………あぁ。」
「っ!! ……そ、そんな…。」
私の返事に、秋葉はフラフラとした足取りで自分のベットへと歩く。

「まぁ、これで志貴さんも完璧な女の子という事で、本日は赤飯ですねー。」
「…琥珀さん、それはやめて。」
「えー、これは日本の古くからの風習ですよー?」
「…だから、恥かしいからやめて。」
「そうですかー、残念ですねー。」
本当に残念そうな顔をする琥珀さん。

「と、遠野君。そ、その…、もう戻れないんでしょうか…。」
「いや、それはわからないけど…。」
「そ、そうですよね…。すいません、遠野君、私達のせいで…。」
「い、いや、先輩達がそう落ち込む事じゃないから…。」
「志貴さんは女の子になっても志貴さんですから大丈夫ですよー。」
「まぁ、このまま戻れないのは嫌だけどね…。私は私だから、なんとかなるよ。」
「は、はい…。そうですね。遠野君は遠野君です。」
自分に言い聞かせるように呟くシエル先輩。

「まぁ、そういう訳です。で、志貴さん。」
「はい? なんですか?」
「そのですね…、生理の時の女の子は具合が悪くなったり機嫌が悪くなりやすいので、その時は言って下さいね。」
「あぁ…、うん。わかりました。」
「はい。それではとりあえず晩御飯を頂きにいきませんか?」
「琥珀さん…、とりあえず、翡翠を起こさないと。」
「あら、すっかり忘れてました。」
そう言ってにこにこと翡翠の鼻をつまんで引っ張る琥珀さん。
…いつも翡翠はああやって起こされてるんだろうか。

「…ん、あ、ここは…。」
翡翠は琥珀さんの攻撃によって目が醒めたらしい。

「おはよう翡翠。突然倒れたからびっくりしたよ。」
「そうだよ翡翠ちゃん。いくらショックだったからって倒れる事ないじゃない。」
「あ………、も、申し訳ありません。つい、気が動転して…。」
「ん。まぁ、しょうがないけどさ。」
翡翠が起きたのを確認すると、琥珀さんが部屋にいる全員を見て言った。

「はいはい、それではみなさん。項垂れてないで早く夕食を頂きにいきましょう。」
その声と共に、みんながぼーっとしながらも廊下へ向かって歩き出した。


「姉さんが…、姉さん…、姉さん…。」
秋葉が不気味な独り言を呟きながらフラフラと廊下へ出る。
その背中を見ながら、私達も食堂へと向かった。

途中、倒れそうな秋葉を支えながら。