「イヤだ。それはできない相談だな。」
「いや、それは判っているんですが…。」
「大体、私にはそんなもの向いてないんだよ。わかるだろ?」
「いえ…、まぁねえさんはそういった事が好きではないのはわかるんですが…。」
「だろ? だったらなんでそんな話するんだ?」
「それは、その…。私も、姉さんが側にいてくれると安心ですし、それに…。」
「それは嬉しいけどさ、でも私には…。」
「ですからっ、無理を承知で…。」
「志貴ちゃーん、一緒に帰ろう〜。」
今は放課後。
廊下で秋葉と会話をしていると、後ろから弓塚に唐突に声をかけられた。

「あぁ、もうそろそろ帰るだけどな…。」
「弓塚先輩、申し訳ありませんが、今ちょっと姉さんと大事なお話中ですので…。」
「だから、私はそんなのやる気ないって…。」
「ですから、私も無理を承知で…。」
「あの〜、なんの話?」
「えっと、………あっ、そうだ!!」
私は咄嗟に思いついた事を直接弓塚に言ってみた。

「弓塚、お前、生徒会入らないか?」
「なっ、姉さん…。」
「へ? 生徒会?」
「いや、実はさ、昨日の寮内の騒動知ってるだろ?」
「あ〜、うん。昨日琥珀さんから聞いた。」
「それで、今日秋葉が生徒会長とかをリコールするんだって、その後釜に秋葉が就きたいらしいんだけど、
どうしても秋葉の今の席に現生徒会長か、その取り巻きが就きそうなんだってさ。」
「あぁ〜、権力争い〜。」
「ちょっと、姉さん…。」
「いいから、秋葉は黙ってろ。それで、秋葉は自分が信頼できる奴って事で私を副会長に仕立て上げたいらしいんだけど…。」
「え〜、志貴ちゃんはそういうの向かないよねぇ〜。」
「な、そう思うだろ? だから、私の代わりに秋葉の手伝いしてやってくれないかな?」
「え〜っ!! わ、私がぁ〜!?」
「ね、姉さん!! な、なんで弓塚さんなんですかっ!! 私は…。」
「だからさ、秋葉。私にはそういうの向かないんだって。中学からの付き合いの弓塚が言うんだから間違いない。」
「いやぁ、まぁ、確かに志貴ちゃんにそういうのは向かないとは思うんだけど、さ…。」
「それで、弓塚だったらそういう事がキチンと出来るし、前の学校でも学級委員だったしさ。それに、弓塚だったら信用できるから、うん。」
「えっ!! そ、そんな事ないよぉ〜。」
「いや、弓塚だったら大丈夫だ。」
「し、志貴ちゃん…。」
「だから秋葉。私は弓塚をオススメする。弓塚のほうが先輩だしな。いろいろ相談できるだろ。」
「うっ、ま、まぁそれはそうなんですが…。」
「それとも秋葉、弓塚じゃ嫌だっていうのか? 私の言葉が信用できない?」
「うぅっ、わ、わかりました。姉さんがそこまでおっしゃるんでしたら…。」
「うん、私なんかより絶対頼りになるから。な? 弓塚。」
「あ、う、うん!! そういう事なら私がんばるよっ!!」
「じゃぁそういう事で、いいよな秋葉。」
「は、はい…。それでは弓塚先輩、今から生徒会の会議に出席して頂けませんか?」
「あ、今から?」
「えぇ、今からです。」
「そ、そっか、うん、わかった、しょうがないね…。」
「では、姉さん。失礼します。また夕食の時に。」
「ま、また後でね〜、志貴ちゃん。」
「あぁ、また後で。」
そういって、秋葉と弓塚は生徒会室へと向かった。
私のスケープゴート作戦は見事成功した。
(…スマン、弓塚。頑張れよ…。)







「へぇ、それで今度生徒会選挙があるのか。」
「そういう事よ。それで、今日はみなさんに集まって貰ったんですが…。」
秋葉は自分達の部屋を見回す。
そこには、羽居ちゃん、蒼香ちゃんはもちろん私、晶ちゃん、翡翠、琥珀さん、環ちゃん、そして秋葉と弓塚がいる。
ついでに言うとアイツも。

「それで、姉さん…。どうしてこの方がこんな所にいらっしゃるんでしょうか…。」
「いや、それは私に聞かれても…。ホレ、なんでいるんだ? お前」
「えっとねー、今日は寮の見回りとかしてくれーって、それで廊下歩いてたら志貴見つけただけよ。」
「こ、のっ!! だからなんで貴女はここにいるんですかっ!! このあーぱー女っ!!」
「と、遠野さん…、せ、先生にそれはマズイよ…。」
「環、貴女はこの女の事を知らないからそんな事が言えるのよ…。」
「志貴ー、妹やっぱ短気だよねー。」
「だぁっ!! お前は何気なしに腕絡めてくんなバカッ!!」
「ぶーっ、いいじゃんケチー。」
「環、アレがあのあーぱー女の真の姿よ。」
「ねー志貴ー、妹なんで怒ってるのー?」
「貴女がいるからでしょうっ!! いいから出て行きなさいっ!!」
「やだ。折角志貴と堂々と会えたんだもん。」
「お、おい…。お前、ここには事情を知らない人間が…。」
「し、志貴さんは、せ、先生とどういう関係で…。」
「えっと、環だっけ。志貴は私のモノだから、ダメだよ。」
「だっ、ダレが貴女のモノなんですかっ!! 姉さんは私の姉さんですっ!!」
「…お前、もう喋るな。あと秋葉も、ヘンな所で熱くなるな…。」
「あ…、はい。申し訳ありませんでした…。」
「むー、志貴のいじわる。」
「いじわるとかそういう次元じゃねぇだろうがっ!!」
「あの、志貴さん。そろそろ秋葉さまの話の続きを…。」
「あ、そうだった。それで、秋葉。今回私たちが呼ばれた理由は?」
「あ、はい…。それで、今度の生徒会役員選挙に向けて、みなさんに手伝って頂きたい事があるんです。」
「おい、遠野。まさか立候補しそうな奴を片っ端から始末するとか…。」
「蒼香、貴女本気で言ってないわよね?」
「まぁ…、半分半分て所だな。」
「ふぅ、まぁいいわ。それで、貴女達に協力して頂きたいのは、弓塚先輩なんですけど。」
「弓塚が、どうかしたの?」
「えぇ、弓塚先輩は実力や実績はあるとはいえ、こちらに転校してからまだ日が浅いですから、票を集めるには名前が売れていないんですよ。」
「あぁ〜、まぁそりゃそうだよなぁ。」
「まぁ最も、弓塚先輩は転校してきて日が浅いのにもうご自分の学年の生徒には信頼の置かれているようなので、二年生の票は獲得できるようですが。」
「えっ、いや、そんな事はないと思うんですけど…。」
「いえ、先輩。二年生の役員の方に聞きましたが、転校以降すぐにクラスの中心になれる方はそういませんわ。」
「そ、そうかなぁ…。」
「それで、実力はあると私は判断したんですが、票は中等部、高等部全生徒から集めなくてはいけません。ですから、こうしてみなさんをお呼びした訳なんですが。」
「そっか。そういう事なら自治会の方でもなんとかするよ。」
「そう、そういって貰えると助かるわ、環。」
「いえいえ、お互いの野望の為だものね。」
「そうね、今そこに確実に近づいているもの。もう少しよ。」
「うん、そういう訳だから、自治会の票はなんとか集めるよ。」
「それでは私は、中等部の票を集めますね。」
「ありがとう瀬尾。助かるわ。」
「いえいえ、遠野先輩は中等部では名が知れ渡ってますから、集めるのは簡単ですよ。」
「それじゃぁ、私達は何をすればいいんだ?」
「そうね、とりあえずそこから先は琥珀に任せるわ。琥珀、巧く『戦略』を練って貰えるかしら?」
「はい、かしこまりました。この琥珀にお任せくださいませっ!!」
なんていうか…、こういう『戦略』とか『計画』とかになると俄然燃えるんだよな、琥珀さんて…。

「そ、そう。それじゃぁよろしく頼みます。」
「はい、おまかせください。」
「それで? 私達はなにをするんだ?」
「いえ、今の所何もする事はないかと思います。後は琥珀の支持に従って手伝って頂けると嬉しいんですが…。」
「あぁ、そういう事なら喜んで手伝うよ。」
「まぁ、私らでよけりゃやるさ。」
「うんうん、秋葉ちゃんの為だもんねー。」
「そう、それじゃぁよろしくお願いします。」
「ねー、妹。それって私も手伝ったほうがいいのー?」
「なっ、貴女まだいたんですかっ!! 貴女に手伝って頂く必要はありませんっ!!」
「ふーん、じゃぁいいや。」
「あ、まぁ、そういった事ですので、今日はこれで解散といたします。」
「しかし秋葉、なんかやる気まんまんだな…。」
「志貴さん、遠野さんは野心家ですから、相手を完膚なきまでに叩き潰さないと気がすまないんですよ。」
「はは、なるほどね…。」
「なにか言いましたか? 姉さん。」
「いえ、なんでもありません…。」
「…まぁいいでしょう。選挙は二週間後ですので、お忘れなく。」
「それでは、秋葉さま。私は今夜中に戦略を練っておきますので、失礼いたしますね。」
「おやすみなさいませ、皆様。」
「あ、それじゃぁ私も帰ります。明日からよろしくおねがいしま〜す。」
「じゃぁ、私達も帰ろうか、晶ちゃん。」
「そうですね、それでは先輩方、おやすみなさい。」
「んー、じゃぁ私も志貴の部屋いくー。」
「先生…、先生は見回りに戻ってください。それじゃぁ遠野さん、また明日ね。」
「えぇ、おやすみ環。」


そうして、みんなバラバラになり、自分達の部屋へ帰っていった。
明日からの選挙活動、このメンバーだと大変な事になりそうなのは気のせいだろうか…。