「むー、レン。私の志貴なんだからだめよー。」
「おいおい、いつお前のものになったんだよ…。」
「・・・・・・・」
「あ、そうそうレン。ミルク買ってきたけど、飲むかい?」
「・・・・・・(コク)」
「そうか、それじゃぁアルクェイド、ちょっとコップ借りるぞ。」
「うん、好きなの使っていいよ。あ、あと冷蔵庫から飲み物取ってきて。」
「はいはい、かしこまりました。」
そう言って私は台所へ向かう。
食器棚からコップを一つ取り、冷蔵庫を開ける。
「………うわ。」
冷蔵庫の中には、私が来た時に作らされるであろうラーメンの具材がたんまり入っていた。
ドリンクホルダ−の方にはお茶、オレンジジュース、それからワインが入っている。
「…おい、アルクェイド。ワインって冷やしていいんだっけ?」
「さぁ、私は知らない。ただなんとなく妹とかが飲んでるみたいだから買ってみただけ。」
「なるほどな…、人間文化への第一歩か。」
「志貴、なんかそれって違うと思うんだけど。」
「まぁ、確かに…。しっかしこれ…。」
冷蔵庫からワインを取り出す。
「へぇ、これってさ、高いんだろ?」
「んー、そういえば三万とかいってたかな。私あまり値段とか気にしないからわかんない。」
「なるほど、お前らしいな。それじゃぁ味もあまり気にしないんだろ。」
「えー、そんな事ないよ。おいしいかおいしくないかはキチンと考えるよ。」
「そうか、まぁそりゃそうだな。」
そう言って、ワインとお茶を取り出し、居間に当る部屋へ行く。
適当な場所に座り、コップにミルクを注いでレンへと差し出す。
「はい、レン。溢しちゃダメだぞ。」
「・・・・・(コクコク)」
「ほれ、お前は折角あるんだからワイン飲め。」
「んー、まぁいいや、わかった。」
私はグラスにワインを注いでアルクェイドへ手渡すと、自分のコップにお茶を入れて飲む。
「あー、やっぱお茶だよな。」
「志貴はいつもお茶だもんね。だから一応置いといたんだけど。」
「あぁ、そうか、ありがたいよ。」
「うん、じゃぁそのお茶飲み終わったら次はコレね。」
そう言って、アルクェイドはワインを差し出してくる。
「…いや、お前。明日学校だって言ったじゃないか…。」
「むー、一口ぐらいいいでしょ。」
「お前は飲んだのか?」
「うん、飲んだけど。なんか葡萄だね。」
「…そりゃそうだろう。ワインだし。」
「んー、そういうもんなのかなぁ。」
「そういうもんだ。お前、アルコールとかは身体に入るとどうなるんだ?」
「ん? すぐ分解されちゃうけど。」
「あぁ、それじゃぁただの葡萄汁飲んでるようなもんなんだろうな。
まぁ好きな人は味や香りを楽しむんだけど、お前にはただの葡萄汁としか感じないだろう。」
「へー、そういう風にして楽しむんだ。酔っ払って楽しむもんじゃないの?」
「えっとなぁ、私はあんま酒飲まないからわからんけど、ワインていうのは酔っ払って楽しむのとは嗜好が違うアルコールなんだとさ。」
これは、琥珀さんや秋葉の受け売りである。
実際、私としてはアルコールは苦手なので楽しむ、という考えを持っていないけど。
「へぇ、そうなんだ。まぁいいや、じゃぁとりあえず分解するの遅くしてみようかな。」
「あぁ、そうするととりあえずは酔っ払って楽しむ、という事ができるんだろう。」
「とりあえず、志貴も飲んで。」
そう言うと、アルクェイドは空いたコップにワインを注いできた。
「はぁ、まぁいいや。その代わり一杯だけだからな。」
「はいはい、わかってるよもう。」
そう言って、私はワインに口をつける。
「…なんか、酸っぱいな。」
「うん、私もそれは思った。」
「前に家で飲んだ時はこんな酸っぱく無かったけどな…。やっぱ保存方法が間違ってたんだな。」
「へぇ、保存の仕方なんてのも決まってるんだ。めんどくさいねー。」
「まぁなぁ、だからきちんと保存して飲んだ時においしいと楽しいんだろうけど。」
「ふぅん、手間をかけて楽しむ、か。やっぱ人間て変だよね。」
「そう思うのは人間じゃない奴だけだろう。たとえばお前とか。」
「む、志貴、なんとなく怒っていい?」
「…すまん、悪かった。」
「うん、よろしい。」
そう言ってアルクェイドはまたワインを飲む。
「あ、でもちょっとおいしいかも。」
「へぇ、そうか。それじゃぁ今度秋葉においしいワインの銘柄聞いといてやると。」
「へぇ、妹詳しいんだ。」
「あぁ、なぜかは知らないけど。日本の法律では20歳未満はアルコールを摂取しちゃいけないんだがな。」
「んー、妹には関係無いんじゃない? だってそれって人間の法律でしょ? 人間外のモノにとってそんなのなんの枷にもなんないでしょ。」
「いや、お前なぁ。ちゃんと人間として生活してるんだからそういう決まりは守らないといけないの。
それだったらお前だって法律とか常識とか気にせずに生活したって問題ないじゃん。
でもそうすると問題だからお前は今みたいな生活してるんだろ?」
「んー、そういえばそうだねぇ。常識とかに人間はうるさいから、目立った行動すると行動しずらいんだよね。
だからそういった事を気にして生活してるんだよね、人間も。」
「そういう事。だからそういう決まりは守ったほうがラクなの。」
「なるほどねー。やっぱ志貴って頭いいねー。」
「いや、頭いいとかそういう事じゃ…。」
そう言いきる前に、アルクェイドが抱きついてきた。
「うわっ!! こらっ、お前零れるだろうがっ」
「むー、いいじゃんけちー。」
「けちとかそういう問題じゃ…。」
「もう、うるさいなぁ…。」
そう言うと、いきなりアルクェイドは唇を重ねてきた。
「んんっ!!………。」
「んっ……っ……。」
「……っぱぁ、…はぁ、お前、いきなりなにすんだよっ!!」
「んー、いいじゃん別に。したかったからしたの。」
「したかったからってなぁ…、いきなりはやめろよ…。」
「んー、そっか。じゃぁ前もって言えばいいんだね。」
「あ、あのなぁ。そういう意味じゃなくて。」
「んー、まぁいいや。志貴とキスできたし。今夜はいい夢見れそう。」
「…お前、夢って見ないんじゃなかったっけ?」
「元々そうなんだけどね、最近はたまに見るんだよ。こんだけ活動してるのって初めてだし。多分情報の整理とかが必要なんじゃないのかな。」
「なるほどな…。そう考えるとお前、だんだん人間臭くなってくな。」
「むっ、なによ志貴。吸血鬼が人間臭いなんて言われて喜ぶと思う?」
「さぁ、それはわからないけど。でもどんどん人間臭くなってくれば一緒にどっか出かけたりとかする時に私はラクだな。」
「えっ、そうなの? ふーん、それじゃぁちょっとはいいかもね。」
「まぁな。でもまぁ私はお前が吸血鬼だろうが何だろうが気にしないけど。」
「そうだよねー。そういう所は本当志貴だよねー。」
「…おい。それはどういう意味だ…。」
「ん? なんていうのかな、そういう所が志貴らしいって事よ。」
「だから、その『そういう所』ってなんだよ。」
「んー、難しいなぁ。」
「…なんだよそりゃ。」
「まぁいいじゃん。志貴のそういう所私は好きだから。」
「……あのなぁ。」
「ん? なに?」
(そういう事真顔で言うなよ…。)と思いながら、恥かしかったので私は言いよどんだ。
ふと、時計を見ると時刻はもう1時を大きく過ぎていた。
「あっ!!もうこんな時間か。それじゃぁ私は帰るから。」
「んー、そっかー分かった。それじゃぁレンはどうするの?」
「・・・・・・・・・」
「ん? 一緒に帰るかレン。」
「・・・・・(コクコク)」
レンはそう頷くと、猫になり、私の胸に飛び込んできた。
「それじゃぁ、また明日、学校でな。」
「うん、じゃぁおやすみー志貴。」
そう言って私はアルクェイドの部屋を出て、寮へと戻った。