「……さま、志貴さま。朝食の時間です。お目覚めください。」


____まぶ、しい…。


朝日の眩しさが目蓋越しに目に入り、私は目を開けた。

「志貴さま、おはようございます。」
「ん〜、おはよぅひすぃ…。」
「あ、はい…。おはようございます。」
翡翠はこちらを見て、優しい笑顔で朝の挨拶をする。

「ん〜、今何時…。」
「はい、現在の時刻は6時15分となっております。」
身体を起こしてベットの脇の眼鏡をかけて時計を見ると、確かに6時半より前だった。

「そっか…、おはよう、翡翠。」
「おはようございます、志貴さま。」
本日二度目の挨拶を交し、翡翠は深々と頭を下げる。

「それでは、着替えて参りますので、失礼いたします。」
「あ、う…。また食堂で。」
「はい、それでは失礼します。」
翡翠はメイド服から制服に着替える為に部屋へと戻っていった。

「さて…、と。着替えて朝食の準備をしよう。」
そう言ってベットから降り、クローゼットへ向かう時に、カーテンが閉まっている事に気付いた。

「あれ…? 晶ちゃんまだ寝てるのかな…?」
そういえば昨日帰ってきたのは12時を大きく回っていた。
その事を思い出し、まだ眠っているんだろうと思い私は着替え始めた。

パジャマを脱いでYシャツに袖を通している途中、カーテンの向こうからゴソゴソと音が聞こえてきた。

「あ、晶ちゃん起きたー?」
「ん…、ふぁい…。おはょぅ…、ござぃ…。」
「ありゃ、寝ぼけてるのかな…。」
そう思い着替えを続行。
スカートを履いてストッキングを履いていると、突然カーテンが開けられた。

「…ん、おはようございます、とおのさ…。」
「あ、おはよう晶ちゃん。よく眠ってたみたいだね。」
ストッキングを履いている手を止め、私は晶ちゃんに目をやり挨拶をした。
晶ちゃんはなにか一点を見て、立ち尽くしている。
なにがあるのかと思い目線の先を見ると、そこには膝を曲げてスカートの隙間から見えているであろう、私のパンティがあった。
ちなみに柄はピンクのフリルのついた___琥珀さんオススメの一品だ。
どういった意味でオススメかは秘密である。

「っ!! わぁっ!!」
私はそれに気付き、急いで足を閉じて股間を隠す。

「あぁっ!! み、見てません見てませんっ!!」
晶ちゃんはその声に驚いて後ろを向き、真っ赤な顔で否定する。
そんな晶ちゃんの声に私は冷静になる。

「う…、まぁ、見ても別にいいんだけどね…。」
「あ、は、はぃ、まぁ減るものではないし…。」
「うん、まぁそうなんだけどね…。」
「じゃ、じゃぁ、私も着替えますので。」
「あ、うん。判った。」
そう言って、晶ちゃんは慌ててカーテンを閉めた。
(朝から恥かしい格好見られたなぁ…。)
と私が心の中で思っていると、また晶ちゃんから声があがった。

「あ、あの…、遠野さん?」
「うん? どうかした?」
ひどく遠慮がちな声に、ストッキングを履き終わり立ち上がった私は聞き返す。

「えっとですね、その…。」
「うん、なに?」
「あの…、そ、そういった柄が…、こ、好みなんですか…?」
「へっ?」
一瞬なんの事だろう、と考えたが、
それがパンティの柄だと言う事にすぐ思い当たった。

「あっ!! いや、そ、そういう訳じゃないんだけど、下着は基本的に琥珀さんが選んでくれたから、こういう柄が多くって…。」
「あ、そ、そうなんですか。なるほど…。」
「う、うん。なんでか知らないけれど、琥珀さんはこういう柄が好きみたいで…。」
「あ、な、なるほど…。」
「う、うん…。」
晶ちゃんは着替えをしながら話しているんだろう。
ゴソゴソと向こうから音がする。
そして、会話が途切れてなんとなく気まずい時に、コンコンと扉をノックする音が聞こえた。

「志貴さん、朝食にいきましょー。」
「志貴さま、お待たせいたしました。」
扉を開けて入ってきたのは、琥珀さんと翡翠だった。

「あ、琥珀さんおはようございます。」
「はい、おはようございます、志貴さん。」
「あ、おはようございます、翡翠さん、琥珀さん。」
着替え終わった晶ちゃんが二人に挨拶をして、二人もそれを返す。
私はさっきの晶ちゃんとのやり取りを思い出し、琥珀さんに聞いてみる事にした。

「あぁ、そうだ琥珀さん。聞きたい事があるんですけど。」
「はいはい? なんでしょうか志貴さん。」
「あの、下着の柄なんですけど…。」
「あー、はい。私がお選びしましたけど、お気に召しませんか?」
「いえ、そういう訳ではないんですけど…。」
「はぁ、ではどういった訳なんでしょうか?」
琥珀さんはなんだろうか? という感じで首を傾げる。

「あの、琥珀さんも私に選んだのと同じような柄のを履いているんでしょうか…。」
私はこの質問がとっても恥かしくて、顔を赤くしながら聞いた。

「いえー、私はあぁいった柄のものはもっていませんよー。」
「へ? じゃぁどういった基準で…。」
「んー、そうですね。知りたいですかー?」
そう言った琥珀さんの笑顔は、一点の曇りも無かった。
でも、やはりそれは『悪魔の微笑み』のように見えた。

「は、はぁ、できれば…。」
「それはですねー、私が履きたい下着ではなくて、『志貴さんに履かせたい下着』というコンセプトで選んだんですよ。」
「は、はい? そういったコンセプトで、どうしてあそこまで…。」
「甘いですね、志貴さん。今の志貴さんは見た目大変幼い感じで可愛らしい女の子なんです。ですから、そことのギャップを下着に求めた訳なんですよ。
服を脱がせて下着を見ると、『こんな可愛い女の子がこんなにも過激な下着を…』って感じにしてみたかったんです。
その狙いは大成功でした。何度か見させて頂きましたが、それはもう…。」
なんて言いながら、頬を染め怪しい笑みを浮かべる琥珀さん。
見ると、晶ちゃんや翡翠まで顔を赤くしている。

「ぅぅ…、ま、まぁ判りました。今はとりあえず我慢しますけど、次買う時は自分で選びます…。」
「えー、それはダメです。私の楽しみなんですから、いくら志貴さんでもそれは許しません。」
「ね…姉さん。」
「なに? 翡翠ちゃん。」
「その…、こ、今度選ぶ時は私も…。」
「あら、翡翠ちゃんもお見立てしたいんですねー。志貴さん、そういう訳ですから、それは却下します。」
「ぅぅぅ…、翡翠、君もか…。」
「は、はい。申し訳ありません。」
「ぅぅ、まぁいいよ。でも翡翠、できるだけまともなのを…。」
「ぁ、はい。それは善処いたします…。」
「でも志貴さん、次はいつか判りませんから、当分は今ある下着のままですからねー。」
「ぅぅぅ、選ばせるんじゃなかった…。」
「今更言っても遅いですよー。それじゃぁとりあえず食堂へ行きましょう。」
「…はぁ、諦めるしかないのか…。」
がっくりと項垂れる私を連れて、琥珀さん達は食堂へ向かった。