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「ふぁ~、あと一時間で昼飯だぁ~。」 「ちょっと姉さんっ!! そのはしたない言葉遣いはおやめくださいっ!! 」 「…うぃ。」 「それもやめてくださいっ!! 」 私の隣で真っ赤な顔をして秋葉が睨んでくる。 教室のみんなはその光景が凄く面白いようだ。 「しっかしまぁ遠野、お前は大将の前だと感情的になるんだなー。」 ニヤッと秋葉の前にいる蒼香ちゃんが言う。 「フ、フンッ!! 私を怒らせる姉さんがいけないのよ。」 「でもなぁ、私は好きで怒らせてるわけじゃ…。」 「言い訳は結構です。事実、私が不快感を覚えているのはわかるでしょう。 それを意に介さない姉さんがいけないんですっ!! 」 「大将、遠野は家に帰るといつもこうなのか? 」 「いや、家ではもっとひ…」 「姉さん、『もっと』なんでしょうか? できれば続きをお話頂けますか? 」 もの凄いジト目で秋葉が睨む。 「もっと…、そう、もっと家ではおしとやかで、華麗で、優雅で…。」 「姉さん、逆に嫌味としか聴こえませんからもう結構です。」 「…ゴメンナサイ。」 「…大将、遠野には敵わないよ…。」 「うわーん。」 その瞬間、教室中に笑い声が響いた。 キーンコーンカーンコーン ガラガラッ 「はーい、授業にするから席つけー。」 チャイムと同時に教室に入ってきた金髪外人。 「あー、志貴みーっけ。今日はもう自習ー。」 そんな事を言いながら私の机に飛び込んでくる金髪外人。 周りの生徒は目が点だ。 「ちょ、バカッ!! アルクェイドっ!! くっつくなバカッ!! 」 「えへへー、志貴照れちゃってかわいー。」 私の首に腕を巻きつけ、アルクェイドがしがみついてくる。 「バカッ!! そうじゃないだろうがこのバカ女っ!! 」 「むー、バカバカうるさいよー。私は教師なんだから黙って言う事聞くのー。」 「あ、アホッ!! 教師だからこんな行動が…。」 「姉さんから離れなさいこのあーぱー女っ!! 」 今まで呆然とこの光景を見ていたであろう秋葉が、我に返ってアルクェイドに向かって言い放つ。 「あ、妹いたんだ。この時間は自習だから好きにしてていいよ。」 「あ、貴女なにバカな事言ってるんですかっ!! 」 「なによ、私は教師なんだから自分の時間をどう使おうが勝手でしょ? 」 「あのなぁ、アルクェイド、教師には生徒に教える義務ってもんがあるんだ。 それを果たさないとお前、この学院にいられなくなるぞ。」 「んー、その時は大丈夫。なんとかするから。」 「いや、それはお…、私が許さん。」 「えー、なんでー? 」 本当に判らないと言った仕草で、アルクェイドは首を傾げる。 (…怒るなよ、秋葉…。) 私は心の中でそう呟き、アルクェイドの肩を掴んで顔を見据える。 「…いいか、アルクェイド。私はこの学院に在籍している生徒なんだ。 お前はこの学院の教師だろう。生徒と教師は学院にいる間は生徒と教師なんだ。 友達じゃない。でもな、私はお前の事をそんな風には思ってない。 友達はどこまでいっても友達だ。それでも、決められた役割ってものは守らなくちゃいけないもんなんだ。 お前だって判るだろ? 」 「う…、うん。」 「だったら。お前はお前の教師としての役割を果たせ。私も私の役割を果たす。 だから、お前が役割をきちんと果たしてくれないとダメなんだ。 それともお前は役割と果たさずに好き勝手するつもりか? 私はそんな奴の事を友達だとは思わないぞ。 それとも、お前は私に嫌われてもいいのか? 」 「えっ!! そ、それは嫌…。」 「だったら。きちんと教師としての役割を果たしてくれ。 わかったな? アルクェイド。」 そこまで言い切ると、アルクェイドの頭に手をポンと置き、笑顔でアクルェイドに問い掛ける。 「う…、うん。わかったよ志貴。ごめん。」 そういって俯くアルクェイド その頭を置いたで優しく撫でる。 「うん、判ってくれればいいんだ。じゃぁ授業を始めてくれ。」 「うん、えへへー。頑張るね、志貴。」 「おう、頑張れ。」 そういって、アルクェイドは教壇へと向かった。 私は騒ぎが収まった事で安堵の溜息を漏らして席に付こうとする。 ふと、視線を感じて顔を上げると、教室全員の視線が私に集まっていた。 中でも秋葉や翡翠の視線はまさに『死線』となって私に叩きつけられていた。 「はーい、それじゃぁ授業を始めまーす。」 そんな事にも気づかず、満面の笑みで授業を始めるアルクェイドがいた。 「全く、姉さんには呆れますわ…。」 「遠野、お嬢様言葉になってるぞ…。」 「んー、でもなんか志貴ちゃんかっこよかったよー。」 「あの言い回しは絶妙でしたねー。」 「志貴さまはああいった所ではもの凄い力を発揮されますから。」 「本当、呆れ返ります。」 昼食中、一緒に食べている方々からそんな発言を頂いていた。 「あ、志貴ちゃんもう来てたんだー。」 「あっ、弓塚、丁度いい、私を助けてくれ…。」 「ん? なんかあったの志貴ちゃん。」 昼食の載ったトレーを手に、弓塚は私と同じ席に付いた。 「いえ、先輩。これは姉さんの自業自得ですから、気になさらないで結構です。」 「秋葉、なんでアレが自業自得なんだよ。あれはアルクェイドの…。」 「志貴さんはそれが判ってないから自業自得なんですよー。」 「う…、それはどういう意味なんでしょうか、琥珀さん。」 「姉さん無駄です。志貴さまがわかる訳もありません。」 「そうだねー翡翠ちゃん。それが判ったら志貴さんじゃないもんねー。」 「そうよ琥珀。それが判ったら私達はこんな苦労はしていないわ。」 「う~ん、どうやら志貴ちゃんが悪いんだね~。諦めなさい、志貴ちゃん。」 「弓塚…、お前も私を見捨てるのか…。」 「そ、そういう訳じゃないけど、会話を聞いてたらなんとなくね。」 「そうよ姉さん。判っていないのは貴女だけです。」 「でも…。」 みんなの意見の過半数は私の行動を非難するものだったが、 私はなにが非難の元なのかが、てんでわからない…。 そんな会話を延々と繰り返しながら、私達の昼食は幕を下ろした。