「えっとー、明日から臨時で英語教師をやりまーす、 アルクェイド・ブリュンスタッドです。みんなよろしくー。」 格式高い名門校の教師とはとても思えない挨拶を、全校集会で行った金髪外人がいた。 「はぁ、本当に、何を考えているんでしょうか、あのあーぱーは。」 「まぁ、あれがあいつなんだけどな。逆にさ、秋葉。」 「はい、なんですか? 姉さん。」 「逆にさ、あいつが丁重なご挨拶をしてきたら、どうだ? 」 「…、辞めましょう、なんだかうすら寒くなってきました。」 「あぁ、そうだな。ちょっと想像しただけで天地がひっくり返りそうだ。」 「なにがひっくりかえるの? 」 下校途中の私達に、突然現われたアルクェイドが話し掛けてきた。 「あぁ、お前は丁寧語を使ったら気色悪くてどうしようもないっていう話だ。」 「むー、なんか志貴すごい失礼な事いってるー。」 「事実ですよ事実。」 そんな私達の会話中に 「なぁ、遠野。やっぱこの外人教師は知り合いなのか? 」 蒼香ちゃんは当然の質問を投げかけてきた。 「あぁ、蒼香ちゃん。紹介してなかったね、そういえば。 名前はさっきの集会で聞いたと思うけど、こいつは…。」 「志貴の恋人のアルクェイドでーす。よろしくね蒼い子。」 「ばっ、バカッ!! お前冗談でもそんな事は…。」 「誰が誰の恋人なんですかっ!! このあーぱーっ!! 」 「妹ー、あまり怒りすぎるのは身体に良くないっていってたぞー。」 「ちょ、ちょっと!! 秋葉落ち着け!! 他の生徒に見られてるぞっ!! 」 我を忘れて髪を赤くしそうになった秋葉をなんとか諌める。 「それで、アルクェイド。髪の毛の青い子は月姫蒼香ちゃん、長い子は三澤羽居ちゃんだ。」 「あぁ、よろしく。アルクェイド先生。」 「先生ーよろしくおねがいしますー。」 「うーん、先生じゃなくって、名前で呼んでいいよー。めんどくさいから。」 「お前な…、やっぱ常識が無いよな。」 「むー、知識としてはちゃんと持ってるもん。」 「はいはい、わかったわかった。」 「むー、なによー。なんかむかつくー。」 そんなやり取りをしながら寮へ戻る途中、私は大事な事を思い出した。 「なぁ、そういえばさ…、翡翠と琥珀さんはどうしたんだ? 」 「あぁ、言うのを忘れていましたね。翡翠と琥珀は先に寮へ戻っています。」 「へぇ、そうなんだ。なんかあるの? 」 「さっちんが寮に住むからそれを手伝ってくれてるんだってー。 どっかの妹とは違って、二人は優しいからねー。」 「な、そのどっかの妹っていうのは…。」 「まぁまぁ秋葉。ふーん、でもそっか。今日転校してきたんだもんな。でもなんで弓塚の手伝いを二人がするんだ? そういうのってルームメイトが手伝ったりするんじゃないの? 」 「えぇ、ですから手伝っているんですよ。」 「へ? …って事は、アレか? 」 「はい、弓塚先輩は翡翠と琥珀と相部屋にいたしました。」 「そっか、他に余ってる部屋はなかったのか? 」 「えぇ、空いている部屋は姉さんと彼女達の部屋だけだったんです。それで、その…。」 「なんだ、そうだったのか。でも知り合いと相部屋だったら安心だろうな弓塚も。 別に私と相部屋でもこっちとしては良かったんだけど。」 「なっ!! そんな事私が許しませんっ!!! 」 「ダメよ志貴、それは私も賛成しない。」 二人が睨むように私を見る。 というか完全に睨んでる。 「な、なんで二人とも怒ってるんでしょうか…? 」 「…はぁ、やっぱり姉さんは姉さんですね…。」 「本当、志貴は本当にいつもこうなんだから、大変よね。」 「不本意ですが、その言葉には同意いたします。」 「本当に、大変だな遠野。」 「志貴ちゃんて、鈍いんだねーかなり。」 いつも通り好き勝手言われながら私達は寮へと歩いていく。 「それじゃぁ志貴、とりあえずまた明日ねー。」 アルクェイドはそう言うと私達と別れる。 「あぁ、…そういえばお前、三咲町のアパートから通うのか? 」 「まさか。昨日ちゃんと近くのアパートを契約したわよ。」 「そっか、それじゃ…、ってお前、昨日ってまさか…。」 「うん、昨日志貴の家にさっちんと行ったら車で出かけたから、どこいくのかなーってさっちんと追跡したらここに来たいんだよ。」 「…なるほどな、通りで今日ここに来た訳だ。昨日からちゃんと準備してたんだな、二人とも。」 「えへへー。」 「そっか、判った。でもアルクェイド、私が今住んでる所には、もう一人女の子がいるから、窓から侵入とかしちゃダメだからな。」 「うん、寮に住んでるんでしょ? それはさっちんからいろいろ聞いたから判ってるよ。」 「そうか、安心した。それじゃまたな、アルクェイド。」 「うん、またねー志貴。」 「さようなら、アルクェイド先生。」 「さよーならー先生。」 「蒼香、羽居、あんな方に挨拶なんて不要ですよ。」 「むー、妹ー。今度授業で指名してやるからなー。」 「ふんっ、そんなもの怖くありませんよ。あーぱー女。」 「むー、まーいいや。それじゃーねー。」 私に向かってぶんぶん手を振ると、アルクェイドは自分のアパートがある方向へ向かって歩き出した。 「おかえりなさいませ皆様。」 「おかえりなさいませー、お三人方。」 「おかえり〜、みんな。」 寮へ入ると、荷物整理の為先に帰っていた三人が出迎えてくれた。 「あぁ、三人ともただいま。ところで、三人ともどっかいくの?」 「うん、実は私、ハブラシとかシャンプーとか持ってくるの忘れちゃったんだよ。だから琥珀ちゃんとコンビニまで買いにいこうと思って。」 見ると、琥珀さんと弓塚は私服、翡翠は制服をまだ着ていた。 「そっか、コンビニいくんだ。それじゃぁ門限に間に合うように帰ってこなきゃね。」 「大丈夫だよ、裏の林に入って跳…。」 「あははー、裏の林に入っていけば近道なんですよねー弓塚さん…。」 琥珀さんは冷や汗を流しながら弓塚の口を塞ぎ、口を塞がれた弓塚は黙って首をコクコク揺らした。 周りには他の生徒もいるし、なにより蒼香ちゃんと羽居ちゃんは弓塚の正体を知らない。 さすがのナイスセーブだ、琥珀さん。 「あ、あははは、そうだね、それじゃ、いってらっしゃい。」 「はいー、いってきますー。」 「いってきまーす。」 二人を見送り、ひとまず私達はそれぞれの部屋へと戻った。 「あ、おかえりなさい。遠野さん。」 部屋へ入ると、既に晶ちゃんが居た。 見ると晶ちゃんは机に向かって何かをしている。 「ただいま、晶ちゃん。勉強でもしてるの? 」 「い、いえっ!! そういうのではなくって…。」 「ふーん、じゃぁなんだろ、どれどれ…。」 私はひょい、と首を曲げ、晶ちゃんの机の上を見た。 そこには、私のパジャマと良く似た柄の服を着て、胸をさらけ出している女性の絵があった…。 「あぁっ!! だ、ダメですよ見ちゃっ!! 」 「あ、あの、さ…、晶ちゃん。」 「な、なんでしょうか…? 」 「そ、その絵って、もしかして…。」 「あっ、み、見ちゃったんですかっっっ!!! 」 「う、いや、うん…。」 「あぁう〜っっっ!! 酷いですよ遠野さん…。」 「あっ!! いやっ、ご、ごめんね晶ちゃん。別にそういう訳じゃなくって…。」 「うぅぅぅぅ〜…。」 「あ〜、ご、ごめん。本当に悪気は無かったんだよ。」 「うぅ、まぁ、見られたものはしょうがないですけど…。」 そう言うと、ほんのり顔を赤くして晶ちゃんが私を見つめた。 「あ、あのですね…、この絵を、次の同人誌で使いたいんですけど…。」 「へ? あ、そうなの? うん、いいんじゃないのかな? 私はよくわかんないけど。」 「えっ、ほ、本当ですかっ!! やったーっ!! ありがとうございますっ!! 」 「いや、まぁでも…、あんまりエッチに書かないでね…。」 「あ、は、はい。判りました。」 そういって、晶ちゃんは再び机に向き直り、絵の続きを書き出した。