居間でみんなでくつろいでいると、車が門の前に止まる気配がした。

「お、秋葉が帰ってきたかな。」
「そっかー、妹帰ってきたんだ。いつもより早いねー。」
「いつもを知っているお前を問い詰めたいのは山々だが、その疑問に俺も同意だ。
琥珀さん、秋葉なんで今日はこんなに早いの?」
「それはですねー、大事な用があるからなんですよー。でも、その用っていうのは秋葉さまだけの用ではないんですけどねー。」
また、この人はあからさまに何かを隠している言い方をする。

「さぁさ、じゃぁ翡翠ちゃん、秋葉さまをお出迎えしましょう。」
「はい、姉さん。」
そう言うと、二人は玄関まで向かった。

「志貴くん、妹さんて、すっごいキレイなんでしょ?乾君がこの間いってた。」
「まぁ、キレイかどうかは知らないけど、確かに俺からすれば可愛いかな。」
弓塚さんからの問いに、つい正直に喋ってしまった。
「へぇ〜、やっぱそうなんだ〜。ふ〜ん。」
と、弓塚さんは俺に意味ありげな視線を送ってくる。
その視線に耐えられず、俺は弓塚さんに向かって妹の『真実』を語った。
「あ、でもあいつは素直じゃないし、怒るとすっごく・・・」
「素直じゃなくて、怒るとどうなるんですか?兄さん」

前を向くと、眉毛を吊り上げて、秋葉がこちらを睨んでいる・・・ように見える。
「あ、おかえり、秋葉。弓塚さん、こいつはこう怒っても可愛いんだ。」
「兄さん、あからさまな嫌味に聞こえる発言はやめて頂けますか。」
さらに眉毛を傾け、秋葉が睨んできた。

「おー、妹おかえりー。」
「あ、は、初めまして、私は遠野君のクラスメートで、前にお世話になった弓塚さつきですっ!!
よ、よろしくおねがいしますっ!!」
「・・・・・弓塚さん、敬語使わないでいいよ・・・弓塚さんのほうが先輩なんだから。」
「こちらこそ、よろしくお願いいたします、弓塚先輩。
そちらの金髪とはお知り合いなんですよね?お話は前にカレー先輩からお聞きした事があります。
なにかありましたら、遠野までどうぞお尋ねください。」
流石は遠野家当主、彼女が何者かを把握して、手助けの申し出までしている。
(・・・大人になったな、秋葉。)
お兄ちゃんは感動した。
でも『カレー先輩』はあんまりじゃないかい?秋葉さん。

「で、兄さん・・・・」
弓塚さんへの目線とは対照的に鋭い目つきでこちらを睨む。

「な、なんでしょうか、秋葉さん」
ちなみにこの場合の敬語は、動物に例えるとお腹を見せる、つまり『降伏』を意味している。

「なんでしょうか、じゃありませんっ!!なんでまだこの屋敷に人外のあーぱー吸血鬼がいるんですかっ!!!」
「ぶー、べつにいいじゃーん、さっちんだって元吸血鬼なんだしー。」
「黙りなさいっ!!貴女と弓塚先輩は天と地ほどの迷惑ぶりですっ!!」
「わたし・・・迷惑なんだ・・・・」
「あぁ、弓塚さん、いや、そうじゃなくって・・・ほら秋葉、謝れっ!!」
「う・・・確かに今の言い方には語弊がありました。申し訳ありませんでした、弓塚先輩。」
「い、いえっ、そんな事ないですっ!!迷惑だって言われてもしょうがないし・・・」
「いえ、先輩。私が迷惑なのはそこの金髪だけですから、先輩は気になさらないで下さい。」
「ぶー、金髪っていうなー妹ー。」
「でしたら貴女も妹と呼ばないでくださいっ!!貴女は赤の他人なんですからっ!!」

「まぁまぁ秋葉さま、とりあえず抑えてください。早く本題にいかないと、お時間が無くなりますよ?」
この騒ぎの中、一人冷静だった琥珀さんが秋葉を諭す。
やっぱ、精神的に頼れるのは琥珀さん、だな。

「えぇ、そうね、琥珀。私も大人げなかったわ。
・・・・さて、兄さん。これからみんなで買い物へ行きますので、着替えてきて頂けますか?」
「へ?買い物?・・・そっか、わかった、着替えてくるよ。」
「じゃぁ私も志貴と一緒に・・・」
「却下します。」
「ぶー、なんでよー、妹ー。」
「ダメなものはダメです。これから私達は『家族で』出かけるので、家族でない方は遠慮して頂きます。」
「うん、わかった。それじゃぁアルクェイドさんも私と帰りましょう〜。」
「んー、まぁさっちんがそう言うならしょうがないかー。大人だねー、さっちん。」
「年でいったらアルクェイドさんのほうが大人ですよ〜。」
「先輩、その金髪の場合は『ただ年を取っている』というだけで、大人というものではないですよ。」
秋葉からの痛烈な一発に、冷や汗を大量にかく弓塚さん。
アルクェイドはむー、とまたむくれている。

「弓塚さん、アルクェイド、そういう事だから、今日はごめんな。」
「ううん、今日は楽しかったから全然いいよ。またお茶に誘ってね。翡翠さんも琥珀さんもありがとうございました。」
「またねー志貴、あ、翡翠と琥珀も。じゃぁねー。」
二人はそう言うと、門を・・・飛び越え、足早に帰っていった。

「よほど楽しかったんですねー、弓塚さんは。」
「まぁ、そうなんでしょうけど・・・・。」
近所の人に見られていないかを心配いてしまう。

「それで、秋葉。どこへいくんだ?」
目的地も告げられぬまま、車は街を走っていく。
もうそろそろ駅前で、大きなデパートや映画館が見えてくる頃だ。

「えぇ、そういえば言っていませんでしたね、今日は兄さんと・・・」
と、秋葉が言いかけた時、足元から「にゃぁ」と聞きなれた声が聴こえた。

「おっ、レンじゃないか。今日はずっとここにいたのか?」
俺は足元にいたレンを膝へ上げると、頭を撫でてやった。

「いえ、恐らく先ほど乗り込んだのでしょう。帰る時には見かけませんでしたから。」
返事をしたのは秋葉だった。
ちなみに運転手さんの声は一度も聴いたことが無い。
というか姿を見たことすらない。
現に、今は後姿は見えるが、バックミラー越しでも顔は見えない。
(・・・遠野家七不思議の一つだな。)

そんな事を考えていると、レンが猫から人型に戻っていた。
しかも俺に抱きつく形で。
「あっ、こら、レン、ちょっと、人型はまずいんだ、今・・・」
「あら、別にいいんじゃないんですか?兄さん。私達を気にせず可愛がってあげてください、その化け猫を。」
「秋葉さま、化け猫は可哀相ですよー。ねー、レンちゃん?」
「・・・・・(コクコク)」
「姉さん、レンさまはなんていってるんでしょうか」
「えとですね、『傷ついたので、志貴さんに癒してもらう』っていってるようですよー。」
「琥珀、貴女面白くしようとしてるでしょう・・・ミエミエよ。」
「あらー、秋葉さまにバレてしまいましたか。それじゃぁ志貴さんにはとっくにバレてますねぇ。」
「・・・まぁそうですけど。」
でも、レンの行動が琥珀さんの言った事とあまり変わらないような気がする。
今レンは、俺の胸に頬擦りをしている。

「・・・・・・・」
どうやら胸の膨らみに気付いたらしいレンは、俺の胸に頬を擦りだした。
「っ・・・と、ちょ、レン、それは、そこはマズイ。ひじょ〜にマズ・・・っ」
今日胸がついたばっかりの俺は、もちろんブラジャーなんてものはつけていない。
世に言う『ノーブラ』だ。
正確にはつけていない、というよりも持っていないからつけられない、という事だ。

「・・・・・・」
「ちょっと、化け猫っ!!兄さんに何をしているんですかっ!!兄さんも、へ、変な声ださないでくださいっ!!」
目を白黒させながら俺を見つめるレンに、顔を赤くした秋葉が怒鳴る。

「いや、そうはいってもだな、秋葉。こう、新しい感覚がだな・・・。」
「兄さんっ!!そんな事真顔で説明しなくて結構ですっ!!」
さらに顔を赤くした秋葉が怒鳴る。
見れば横の翡翠や琥珀さんもほんのり赤くなって俺を見てくる。
俺はレンに頬擦りされた時点で赤い。

「あぁ、そうか、レンには今日一度も会ってないもんな。
・・・実はな、俺、女の子になっちゃったんだってさ。」
我ながら、他人事のように言ってしまう。
そんな言葉を受けて、レンはさらに目を白黒させる。

「・・・・・・」
と、何を思ったのか、レンは自分の後ろ側・・・つまり俺の下半身へと手を伸ばす。

「わぁー!!ちょっと、それは待て、レン。それは、ちょっと、待て。」
「・・・・・」
気配を察した俺は叫ぶが、レンの手は止まらない。
身の危険を察した俺はとりあえず足を閉じる。

「・・・・・・」
が、その閉じた足の付け根へと伸びるレンの手。
「わーっ!!、まって、まって、頼む、まって・・・」
言い終わる前にレンはその『部分』をズボン越しで・・・揉んだ。
「ひゃぁっ!!」
知り得なかった未知の感覚に思わず声をあげてしまった後、我に返って恥かしくなる。
「あはー、志貴さん女の子みたいですー。」
「姉さん、今は志貴さまは女の子です。」
「あはー、そうでしたねー。」
「・・・・二人とも、喜んでないか・・・・」
「「そんな事はありません(よー)」」
・・・嘘だ、絶対嘘だ。
なんでこの二人は嬉々としてこの状況を見ているんだ。

(あらー、志貴さん可愛いですねー・・・いぢめたくなっちゃいます・・・。)
(・・・・・・・・志貴ちゃん、かわいい)


「な、わかったろ?レン。これが今の俺だから・・・・」
言い終わる前に、またレンがあの『部分』を揉んだ。
「ふぁっ!!ちょ、ちょっと、ま、待てレン、もう判っただろ・・・」
「・・・・・・」
「・・・っ!!あぁんっ!!ちょ、マジで、もうや・・・あぁっ!!」
「あはー、レンちゃんいたずらっ子ですねぇ。」
「・・・志貴ちゃん、かわいい」
「ちょっ、まっあぁっ!!ふ、二人とも止めて・・・うぁっ!!」
ナゼか翡翠、琥珀のお二方は俺の腕をかっしりと掴んで離さない。
・・・・俺、なんか悪いことしたかな・・・とマジで考えてしまう。

「あぁっ!!・・・つ、あ、秋葉、とめてく・・・んうぁっ!!」
「・・・っ!あぁっ!!もう、なにやってるんですか貴方達はっ!!いい加減やめなさいっ!!」
「あらー、秋葉さまに怒られたので、もうやめましょうねーレンちゃん。」
「・・・志貴ちゃん、かわいい」
「・・・・・・・・」
と、とりあえず秋葉のお陰で止まったようだ。
とりあえず秋葉、見てたんだったら早く止めてくれ。
お兄ちゃんは辛かったぞ、かなり。

そんな目で秋葉を見ていたら目が合い、
ボンッ!!
という擬音が聞こえそうなほど顔を紅潮させた秋葉があらぬ方を向いた。
・・・・・そうか、あいつも楽しんでたのか。



「・・・・・はぁ、はぁ、はぁ、」
先生、俺、もうダメかもしれません。