「そういえば、弓塚さんはどうしてアルクェイドさんとお知り合いになったんですか?」 琥珀さんが、そう疑問を口に出してしまった。 「え、え〜っと、それはですね・・・・」 気まずそうに弓塚さんはこちらを見ながら返事する。 「えとねー、『ロア』にさっちんが血を吸われちゃって、それを志貴が私に頼み込んできたからなんとかしてあげたの。」 『ロア』の言葉を聞いて、琥珀さんの笑顔に影が差し込んだ。 「バッ・・・バカアルクッ!!!」 「えー、いいじゃんもう終わったことだし。もう済んだ事はいいじゃんかー。」 「バカッ!!お前はよくてもなぁ・・・」 「あぁ、志貴さん、いいんですよ。アルクェイドさんのおっしゃる通り、終わった事ですから。 ですが・・・、弓塚さん。」 琥珀さんの顔には一層影が差し込み、弓塚さんに声をかけた。 「は、はい・・・?なんですか?」 「・・・ごめんなさい。『ロア』・・・いえ、『四季』さんの件は私のせいなんです。 普通の生活を送っていた貴女を普通じゃなくしたのは私のせいです。 ・・・・・本当に、ごめんなさい。」 「違うって!!琥珀さんが謝る事じゃない!!あの一件は『ロア』が悪いんだっ!! 琥珀さんは悪くない!!」 「志貴さん・・・。ですが、その『ロア』を利用しようとしたのは私なんです。 今だって、本当は私はこんな風にお話なんてしてはいけないんです。 でも私はみなさんに甘えて・・・」 「・・・・姉さん」 「違うんだ・・・琥珀さんは俺達に必要だから。だから一緒にいて欲しいんだ。 そんな風に考えたら、一番の原因はアルクェイドなんだよ。 でも俺達は今こうやってアルクェイドと一緒に、ここで笑ってお茶を飲んでる。 みんな琥珀さんを好きなんだよ・・・・。 だから、俺達の為にもそんな事言わないでくれ・・・。」 「んー、そうだよね。志貴の言う事は正しいよね。うん。 ごめんねさっちん。私も悪かったよ。」 続いて頭を垂れるアルクェイド。 純粋なお姫様は本当に悪いと思ってるんだろう。 「それだったら、俺も謝る。 ごめん弓塚さん、俺も、君がピンチの時に助けてあげられなかった。 約束したのに、助けてあげられなかった。 だから、ごめん・・・」 俺も続いて謝った。 「志貴くん・・・」 「志貴のせいじゃないよ。」 「志貴さんのせいじゃないです・・・。」 「いや、俺のせいだよ・・・・」 「いえっ、そんな、みんな謝る必要なんかないですって!!」 胸の前で両手を振り、大きな声で言う弓塚さん。 「こうなった原因は、私にだってあるんです。 夜中出歩かなければこうならなかったし。 それに、志貴くんとアルクェイドさんは私をちゃんと助けてくれました。 琥珀さんが前いどうしたかは知りませんけど、少なくとも悪いのは『ロア』ですから。 琥珀さんは関係ありません。これは絶対間違ってません!!」 一気にまくしたてると、弓塚さんは最後に琥珀さんに向かってそう言った。 その勢いと『悪くない』と断言された事に圧倒されたのか、琥珀さんは影のない笑顔で 「・・・ありがとうございます。弓塚さん。」 と頭を下げた。 「でも弓塚さん、結局貴女はどうなってるんでしょうか?」 またもや琥珀さんから疑問がでた。 だが今度のははっきり言って説明しずらい。 「えっとですね、・・・アルクェイドさん、判ります?」 「んーと、なんとなくなら判るんだけど、志貴、わかる?」 「えーっと・・・・なんて説明すればいいのか・・・」 それぞれ疑問をたらい回しにし、琥珀さんへ疑問を返した。 「あらー、判らないんですか?」 「えっとですね・・・アルクェイドさん、お願い。」 「えー、さっちんがわかんないのに私わかんないよー。」 「あー、じゃぁ俺がなんとなく説明するよ。」 「あ、じゃぁ志貴くんおねがい。」 弓塚さんからやはり回ってきた疑問を、俺はすくい上げて話した。 「俺もなんとなくしかわかんないんだけど、一度弓塚さんは『死徒』になったんだけど、 その弓塚さんを死徒にした『死徒』、つまりロアを俺が倒したから、ロアの影響は受けないようになったんだ。 でも吸血衝動とか、体細胞の崩壊とかが激しい分、やっぱり他の『死徒』と変わらないんだけど、 それをアルクェイドの血を飲ませて、アルクェイドの影響っていうか、地球の恩恵がアルクェイドから分けてもらえるようにしたんだけど、 結局それで収まったのは吸血衝動だけで、細胞の崩壊は止められなかった。 だから、俺の体にある『混沌』の一部を弓塚さんに分けてから、俺が影響を受けた魂の淀みだけを『殺した』んだ。 もちろんそんな事したら普通死ぬんだけど、弓塚さんは『ロア』の影響をもう受けてなかったし、アルクェイドの力を分けてもらったから普通じゃなかった。 結果的に魂の淀みは晴れたんだけど、アルクェイドの影響が途切れたらまた魂が淀んでしまううんだ。 俺が殺したのは『魂の淀み』で、『淀みの原因』じゃないからね。 淀みの原因は今度は『魂』になっちゃうからそれを『殺す』と、弓塚さんは死んじゃうから、それはできない。 結果として、今の弓塚さんは『人間だけど人間じゃない』、まぁ、秋葉みたいな状態なんだと思うよ。 弓塚さんの血にはもう人じゃないモノの血が溶け込んじゃってるからね。 そういった部分では秋葉と弓塚さんは同じなんだろうな。」 と、そこまで言い切った俺に、二人は 「へ〜、そうだったんあ〜。志貴くん物知りだね〜」 「うん、志貴って結構物知りだよね。私も知らない事とか多分しってるよ。 今度疑問があったら志貴に聞こうね、さっちん。」 「そうですね〜。その時はお願いね、志貴くん。」 なんて会話をしていた。 アルクェイドはおろか、弓塚さんまでこんなお気楽だったとは・・・。 「で、一応わかりました?琥珀さん。」 「はいー、弓塚さんは魔法少女みたいなもんですねー。」 また、簡単に略してくれた。 そんな簡単でいいんですか、琥珀さん・・・。 「あ、魔法少女か〜、いいかも。」 「えー、魔法少女っていうよりは人間と死徒のハーフだよ。それだったら私だって魔法少女だし。」 「いや、お前は根っからの吸血鬼のお姫様だろうが。」 「そっか、アルクェイドさんてお姫様なんだよね〜、すごいな〜。」 「へー、そういうもんなの?さっちん」 「そういうもんですよ。お姫様か〜、憧れるなぁ〜。女の子の憧れですよ〜。」 「あははー、じゃぁ私憧れの的だー。志貴も憧れていいよー。」 「人の作るラーメンをずるずる食うお姫様には憧れないな。」 「あ、ひどーい。」 「でも志貴くんのラーメンておいしいよね〜。もう一度作ってね〜。」 その時ふいに、翡翠の目が輝いた。 「・・・・・志貴さま。」 「ん?どうしたの翡翠。」 「あの、よろしければ・・・ラーメンを頂けませんか?」 「え、あぁ、いいけど・・・いつ作るかわかんないよ?今度」 「いえ、今すぐお願いいたします。」 なんか、翡翠の目が輝いてるんですけど・・・・。 「あらあら、翡翠ちゃん、あまり無理を・・・」 「姉さんは黙っててください。」 なんか、真剣ですね、翡翠さん。 琥珀さんがちょっと引いてるよ・・・・。 「志貴さま。」 「は、はい。」 「お願いできますでしょうか。」 「えっと・・・今すぐ?」 「今すぐです。」 即答されてしまった。 「しょうがないな・・・じゃぁみんなの分作るよ。琥珀さんも手伝ってくれると助かります。 翡翠が我が儘言うのなんて珍しいですからね。」 「あ・・・申し訳ありません。」 我に返って頭を下げる翡翠。 ちょっと可愛かったので頭を撫でながら椅子から立ち上がる。 「はいー、じゃぁお手伝いさせて頂きますねー。」 琥珀さんが椅子から立ち上がるのを見て、 あ、そういえば と気付いた事をみんなに聞いた。 「三人は、どんな味が好み?」 「私はちょっとあっさりしたのー。あ、でもニンニクはだめー。あれはおいしくないのー。」 「私もちょっとあっさりした感じでお願いします〜。私もにんにくはいれないでね?」 「こってりでおねがいします。」 「うん、わかった・・・・・て、翡翠?」 「はい、なんでしょうか?」 「えっと、味の好みは・・・」 「こってりでお願いします。」 「えっと・・・こってりって、こってり?」 「はい、こってりでお願いします。」 「・・・脂ギトギト?」 「はい、お願いします。」 「・・・・・わかりました。」 翡翠の気迫に押されつつ、俺と琥珀さんは台所へ向かった。