---------今日は熟睡してるなぁ

夢も見ず、ここまで深い眠りに落ちたのは結構久しぶりかもしれない。

これも、アルクェイドの魔眼のお陰かな・・・・。

---------お陰っていうよりも、魔眼の『せい』って感じか。

冷静に分析したりする。まぁ実際「お陰」とか使うとどっかのメイドさんや家政婦さん、ひいては我が妹の眉毛
が不快そうに動くのでやめておこう。

----------なんか、視線が痛いんですけど・・・

翡翠かな?と一瞬思ったが、翡翠だったら「志貴さま、起きてください」と声をかけてくるはずだ。

----------まぁいいや、とりあえず起きよう


・・・・・・いつもの日差しが差し込んでくる。
目を薄く開け、ここが自分の部屋だと確認する。

「・・・ふぅ、今日は自分で起きれたんだなぁ」

余り起こらない自分の快挙に、ちょっと自慢気に呟いてみる。

「今何時だろ・・・」
ベットの横に置いてある眼鏡をかけ、時計を見る。

「・・・あれ、いつもより10分は遅いな。」
ふと、そんな事を呟いた時、視界の隅に金色のモノが入った。

「・・・・・・おい。」
お姫様が座り込んで寝ていた。

「おいっ、おいっ!!アルクェイド起きろ!!このバカ!!」
大声をあげ、ゆすって起こそうと試みるが

「んん・・・まってぇ、もうちょっとぉ・・・」
などとブツブツ言って寝入ってるアルクェイド
まぁ、朝に強い吸血鬼なんてものはいないだろう。

「・・・はぁ、翡翠が来てたら大変な事に・・・」
言って初めて気付いた。
翡翠が今日は時間どおりに来ていない。

「翡翠、なんかあったのかな・・・・」
と、扉に目をやる。
「っ!!・・・・ひ、翡翠さん?」

扉に目をやると、翡翠はきちんと来ていた。
でも様子が変だ。心なしか頬が赤いし、何より目が・・・

「・・・・・翡翠?翡翠?どうした?」
虚ろな目で俺の姿を捉える翡翠。
視線の正体は翡翠だったのか。
でも変だな・・・・

「おーい、翡翠ー?どうしたー?」
ハッ!!という擬音が聞こえそうなほど驚きの表情を浮かべた翡翠。

「・・・・志貴、さま?」
「うん?翡翠どうしたの?」
「あ・・・・志貴、さま?」
「いや、そうだけど・・・あぁ、おはよう翡翠。」
「あ・・・おはようございます、志貴さま」
ペコリといつも通りの角度で頭を下げる翡翠。
でも目が虚ろでなんか変だ。

「あ、翡翠、着替えるから先にいってて。」
「あ・・・・はぁ」
と、空返事をして部屋を出る翡翠。
いつもなら出るときにおじぎをするのだが、今日はそれをせず、廊下に出てゆっくりと扉を閉めた。

「ん〜?なんか変だったな翡翠。」
いつもの翡翠らしくない行動に疑問を持つが
「まぁいいか、すぐ着替えよう。」
何事も悩みすぎは禁物、だ。

ベットを出て床へ降りる。
あれ、天上が高くなってるか?
「・・・琥珀さん、なんか仕掛けたかな。」
思い当たるのはそんな事だけだ。

いつものようにTシャツを脱いで着替える。
と、妙なものが目に付く。

「・・・・・あれ?」
体の一点を見て硬直。
・・・・なんだろう『コレ』は。
「これって・・・・あれ?」
確かに自分の体だ。
そのはずなのにあるハズのない『アレ』がある。

そういえば、天上が低い、心なしか体が軽い、なんか声がいつもより高い、髪が・・・
「・・・・・髪が、肩まで伸びてる・・・・」

落ち着け志貴、そんなはずはないんだ。
そう、そんなはずはない。俺はちゃんとした男だ。
そう、大丈夫、大丈夫だ志貴、先生に教わっただろ。

「冷静に周りを見て、落ち着いて行動しなさい。」

自分で言葉に出せば大丈夫。オーケー落ち着いた。
じゃぁホラ、確めようじゃないか、さっきは寝ぼけてたんだ。

「・・・・・・あれ?」
・・・・・ある。
なんだこれは、なんだ、なにが起こってるんだ。
他の人間が今の俺の顔見たら「末期ですか?」と言わんばかりの顔だろうなー、と冷静に考えるが、出た冷や汗は一向に引かない。

「オーケー落ち着け、志貴。ちゃんと俺にはあるんだ。大丈夫。」
言うやいなや、履いていたズボンの中に手を突っ込む。

「・・・・・・・・・」
正に『滝のような汗』、だ。
あるはずの、文字通り『モノ』が無い。

「・・・・ぅ・ぅ・ぅ・・・」


「うわあーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!」

思わず上半身裸で廊下へ飛び出す。
そこには居間へいくはずの翡翠がぼーっと立っていた。
ガッシリ翡翠の肩を掴む。

「ひ・・・ひす・・・ひす・・・」
「あ・・・・あ・・・あ・・・」

翡翠も驚きの表情と虚ろな目を白黒させ、声にならない声を出す。

「兄さん、どうしましたっ!!!」
「志貴さん大丈夫ですかーっ!!」

と叫びながらいつも通り居間にいたであろう秋葉と琥珀さんが階段を駆け上がる。

「大丈夫ですか!!にいさ・・・」
「志貴さん、どうし・・・・・」

廊下にいる俺と翡翠を捕らえると、翡翠と同じく二人とも目を虚ろに、白黒させる。

「あ・・・あき・・・こは・・・さん・・・」
俺はガクガクと声にならない声をあげ続ける。

「あー、志貴起きたー?おはよー。」

部屋へ振り返ると、ん〜、と声を出しながら背骨を伸ばしアルクェイドが声をかけてきた。

-------------コイツだっ!!!!

一直線にアルクェイドの目前まで、猛ダッシュで駆け寄る。

「お・・・おま・・・お前かっ!!アルクェイド!!!!」
「んー?なにがー?」
すっとぼけるお姫様

「な、なにがって、これだよこれっ!!!!」
「あー、ちっちゃいねー志貴。やっぱ兄妹だねー。」
俺の『ソレ』を見てアルクェイドがどんでもない事を言うが、そんな事にかまってられる状況じゃない。

「そんなことはどうでもいいっ!!!なんなんだこれはっ!!」
「うん、えとねー、なんか志貴、女の子になっちゃったみたいだね。」

きっぱりと言ってきやがった。

「・・・・・・・・・・・・」
「んー?聴こえないよ?なんていったの?」
「・・・ぅ・・・ぅ・・・ぅ」
俯き、肩を震わせ呟く俺に、アルクェイドは「聴こえないよー?」と返す。

手を『こっちこいこっちこい』と動かすとアルクェイドは
「なになにー?ないしょばなしー?あはは」
と喜びながら耳を寄せる。

「なにー?いいよー、なんていったの?」
俺の唇に耳を近づけるアルクェイド。
大きく息を吸い込み、俺は。


起きてから二度目の絶叫を叩きつけた。