「栞……」

姉からの、懇願するような声に、ゆっくりと首を振る。

「ダメ……、ですよ。こんな……」

頬を染め、首を振る妹を前に、香里は言いようの無い興奮を覚えていた。

全身を蝕む、蟲の這うような感覚に、香里は身体を震わせる。

「し、おり……」

「い、や……。おねえ、ちゃん……」

そっと、姉の手がそっと触れた肩が、ゆっくりと熱を持つ。

自分を包む柔らかい、暖かい熱に、身体の力が抜ける。

小刻みに震える肩からは、ストールがゆっくりとベットへ落ちた。










香里は、栞の事だけを見つめる。



幼い頃から病魔と戦い、健気に生き続ける栞。

本来支えるべき自分は、それを一度放棄した。

だが、奇跡は起こった。


その日まで持たないだろうと言われていた誕生日を過ぎ、栞は病魔に打ち勝つ。

それは、香里にとって悲劇以外の何物でも無かった。

居なくなってしまう人と、心を通わせれば辛くなる。

香里が選んだのは、栞という存在を認識しない事。

涙を流し、心を引き裂きながら栞という存在から逃げ続けた香里は、この瞬間打ちのめされた。

滑稽以外の何物でも無い。

支えるべき栞を見捨て、逃げ出した先に居たのは、栞。

酷く、自分が情けなかった。

結局、自分のした事は栞を苦しめる事だけ。

護ろうとした自分すら護る事が出来なかった。

後悔だけが残り、侮蔑の言葉で香里は自分を罵る。

自身の過ちに苦しみ、いっそ死んでしまおうとまで思いつめた。

そんな中、自分を追い詰める香里を救ったのは、やはり栞の存在だった。



見捨てられたはずの妹は、それでも姉の存在に救われたと告白する。

香里という存在が無かったら、自分はとうに死んでいただろう、と。

それだけで、十分だった。

見捨てたはずの自分に、救えなかった自分に救われたと言う栞。

香里の中で栞に対する後悔の念と共に、愛しさが湧き上がる。

今度こそ、今度こそ栞を護ろう。

自分の全ての愛情を栞に与え、栞という大切な、自分の命より大切な存在を自身の手で護る。

他の全てを捨てる事になってもいい、大切な栞を今度こそ私が護ろう。

自分の持っている全てを栞に。

栞の言葉に救われた香里は、自分を栞に捧げる。

そして、栞の全てを自分のものに。

香里の栞への想いは、真摯な望みとなった。





姉という存在、香里という存在に護られたい。

自分の全てを、香里に護られたい。

香里の想いと同種のものが、栞の中にも確かに存在していた。






そして香里の想いは、洪水のように溢れ出す。



身を焦がす程の愛情と、狂気にも近い、背徳感に支配された情欲。



それは、自分を求めた栞に、全て注がれる事になる。



それを、栞が拒絶出来ない事を知っているから。









「綺麗……。栞……」

夜空を照らす月灯りが、横たわる妹の身体を闇に浮かび上がらせる。

薄手のセーターに身を包み、濡れた瞳で自分を見つめる栞。

溢れそうな雫を溜めたその瞳が、香里の思考を支配する。

そっと、抱き寄せた。

「んっ……」

「可愛い、栞」

「あっ、お姉ちゃん……」

キュッ、と抱き締められ、思わず声を漏らす。

優しく語り掛けられた耳には、姉の吐息がかけられる。

「栞……」

耳に口付けされ、思わず肩を竦ませる。

全身に走る震えが、止まらない。

耳にされた口付けは、ゆっくりと下へ、下へと降りてゆく。

頬へ、首筋へ、口付けされた部分から電気が走り、神経を犯していく。

「んっ、やっ……。おねぇ、ちゃ……」

ちゅっ、ちゅっと耳に聴こえる音は、栞の思考を鈍らせた。

ゆっくりと、全身を舐る香里の唇が。

栞の中を快感と、愛おしさと、背徳感で埋め尽くしていく。

「んっ! は、あぁ……」

突然の、形を持った快感に、思わず声を出す。

口付けを繰り返す姉の手が、自身の身体に触れていた。

背骨をなぞるように肌に触れられ、セーターの上から未発達な乳房に触れる。

ゾクゾクと走る快感に、栞は悲鳴をあげた。

「だっ、だめです……。おねえ、ちゃ、んんっ!」

「栞……。可愛いわよ……」

耳元で囁かれる甘い言葉に、頬が熱くなる。

湧き上がる背徳感ですら、栞の身を焼き尽くす業火。

力の抜け落ちた横たわる肢体は、為す術も無くその身に快感を生み出すだけだった。

「い、やぁっ……。んっ、やっ、めて……。あぁっ!」

首筋に触れる、暖かい感触に。

乳房へと触れる、優しい感覚に。

栞は拒絶の意を唱えるのとは別に、身体が反応するのを自身でも判っていた。

ゆっくりと、服をたくし上げ、香里の手で脱がされる。

糸の切れた人形のようにされるがままの状況は、栞の背徳感を刺激した。

優しく、手が触れた胸にピリリと電気が走る。

「んんっ、はぁっ。や、そん、な」

「見せて……。栞」

妹の返事を聞かず、触れた下着を脱がし、香里は溜息をつく。

未熟な身体が生み出す、魔の魅力に憑かれた。

慎ましい姿を見せる乳房の先端、桃色の小さな実に香里は指で触れる。

「ふぁっ! やめ、て……。お姉ちゃん……」

再度の拒絶。

だが栞の身体はその意思を裏切り、愛撫の一つ一つに敏感な反応を返す。

触れられた実は硬さを得て、乳房から突き立つ。

声を出すまいと両手で口を塞ぎ、栞は身体を固くした。

その様子を妖艶な笑みで眺め、香里は尖った乳首に口を付ける。

「んんっ! ……んっ、んぁっ!」

口で挟み、舌で先端を舐られ、栞は甘い声を漏らす。

塞いだ口を覆う両手も、漏れ出る喘ぎを抑えきれない。

栞は指を噛み、姉からの執拗な愛撫を我慢しようとする。

だがそれも、敏感な突起を噛まれた瞬間、瓦解するのだった。

「ふわぁっ! あぁっ、 んんっ!」

香里の歯が尖った突起を捉え、先端を引っかくように歯で擦る。

舌で円を描くように輪郭をなぞり、乳首を唇と前歯で挟む。

その度に、栞は快感の衝撃を受け止めきれず、あからさまな喘ぎ声を漏らした。

「はぁぁっ、ふっ。 んぁぁっ。 やぁぁっ!」

妹が自身の愛撫で喘ぐ姿に、香里は噛んでいた口を離し次の段階へと進む事にする。

指先で栞の乳首を弄びながら、香里は徐々に下へ降るよう、ゆっくりと身体を舐める。

鳩尾の窪みに舌を這わせ、もう片方の腕で腰を抱える。

唾液がキャンパスに線を描き、その度に栞は喘ぐ。

香里の舌がじっくりとへそを舐る頃には、栞は自身の下着が下ろされた事にも気付かなかった。

スカートを下ろし、秘部を隠す下着も下ろす。

下着と秘部の間にはねっとりとした液が糸を引き、栞の快感の度合いを形に表していた。

『濡れてる……』

自身の愛撫によって秘部をしどとに濡らす妹に、香里は愛おしさを隠しきれない。

少々乱暴に、だが出来うるだけ優しく下着を足から抜き出して、香里は栞の秘部を指で触れた。

「っ! やめっ! お姉ちゃんっ!」

ビクリ、と強烈な快感が下半身から走った事に栞は驚愕を覚え、身体を起こす。

視線の先では、姉が自分の秘部を眺め、指で触れていた。

それだけで再度の驚愕と、背徳感、羞恥心が湧き上がる。

だが姉は、秘部へ這わせた指を止めることは無かった。

指で触れられた秘部から、クチュリと音が鳴る。

「はぁっ! やぁっ、おねえちゃ、あぁっ!」

姉の指先で秘部を弄ばれ、栞は喉の奥から声をあげる。

顎を上にあげ、背筋を仰け反らせる妹に、香里は更なる羞恥を与えた。

「栞、気持ちいいのね……。こんなに濡らして」

「いやぁっ! やだぁっ! 言わないでお姉ちゃん!」

わざと指で音を立て、クチュクチュと鳴らしながら香里は話し掛ける。

姉の言葉に、栞は両手で顔を覆い隠して涙を溢した。

だがそれでも、快感の波は高さを増して栞に襲い掛かる。

「いやぁっ、やぁぁっ! あぁぁっ、ふあぁっ!」

より一層、羞恥心を刺激された栞は快感の度合いを強めていく。

なすがままにされる栞は、香里の背徳感を刺激する。

栞の声に心の昂ぶりを抑えきれず、香里は指で弄ぶだけだった秘部に口をつけた。

秘部の上、小さな突起を浮べるそれを、香里は唇で優しく包む。

「ふわぁぁっ、かはっ! あふぅっ、あうぅっ!」

敏感な隠核へ口付けを受けた瞬間、栞は大きく身体を跳ねさせて鳴く。

二度、三度と繰り返されるそれに、栞は大きく腰を動かし、身体全体で快感を表現していた。

「あああっ! ふわぁっ! やめっ、やめてぇっ!」

余りの強すぎる快感に、栞は悲鳴を上げる。

その悲鳴は、更に香里に隠核を舐らせる結果になった。

指で蜜壷の入口を愛撫し、隠核を唇で優しく摘む。

時折舌を出し、隠核を舐めると栞は顕著に反応を示した。

「ふぁぁっ! だめぇ、だめぇぇっ! もう、やめてぇぇ……」

涙混じりの喘ぎをあげ、栞は責めを拒絶する。

だかその声には艶があり、言葉通りの拒絶を表していると香里は思わなかった。

次々と蜜を零し、栞の心の内を露にするようにヒクヒクと震える蜜壷に香里は指を浅く挿入する。

「くぁっ! ああぅっ! いやぁ、いれな、いでぇ……」

膣内へ香里の指が進むと、栞は顔を激しく左右に降り、やはり拒絶を吐く。

だが、内部では香里の指を優しく包み込み、蠢き、きつく締め上げ自らの奥へと誘う。

まるで正反対の心を表している両者を、香里は優しく、だが執拗に責め立てた。

「栞……、気持ちいいんでしょう? なんで嫌がるの?」

言葉と共に膣内で指を動かし、壁を擦りながら隠核を刺激する。

内への刺激と外側への刺激に、栞は声をあげる事しかできなかった。

「はぁっ、ふぅぅっ! んあぅっ!」

「ねぇ、栞。お姉ちゃんに教えて?」

香里はクスリとサディスティックに微笑むと、カリ、と隠核を歯で優しく噛む。

「あああっ! ひぃっ! やめ、やめてぇっ!」

強烈な刺激は痛みを伴い、栞は腰を大きく暴れさせる。

二度、三度と腰を跳ね上げた栞に、香里は再び声をかけた。

「ねぇ、栞……。気持ちいい? 気持ち良くない?」

小さな子供に話し掛けるような、優しい声色で栞に言う香里。

それでも笑顔には妖艶な色が濃く写っていた。

秘部を舐りながら問い掛けられた質問に、栞は頭を左右に振り応える。

「ふぁっ! わ、かりま、せん……、うぁっ!」

「わからないの? ここをこんなに濡らしているのに?」

香里は浅く入った指先を曲げ、内部を叩くように動かす。

蜜壷の入口で、愛液が溢れ出しクチュクチュと激しい音を出して濡れている事を顕著に教えていた。

「ねぇ、こんなに音が出てる……。気持ちいいのよね? 栞」

「いやぁっ! いわないで、やだぁお姉ちゃん! うぅっ、やだぁ……」

「ねぇ、栞。気持ち良いのよね……?」

涙混じりに吐かれた言葉に、香里は再度の問いかけで応える。

蜜壷を刺激し、隠核を口で弄ぶ姉の問いに、栞は声に出して応える事は出来なかった。

代わりに秘部は愛液が量を増し、栞の心情を確かに表していた。

香里は膣内から指を抜き、代わりに舌で刺激する。

明らかに今までとは感触の違う快感に栞は膣内を舐める香里の頭を押える。

「はぁぁっ! やめっ、きたなっ、ふぁぁっ!」

「んっ……、はぁ。おいしい、栞の」

言葉を吐き、再び舌を膣内に捻じ込む。

栞は香里の言葉によって再び羞恥心を刺激され、同時に得体の知れない喜びを感じていた。

途端、身体がビクリと一際大きく震える。

「やっ、はぁぁっ! だめっ、お姉ちゃんだめぇっ! おかし、くなるぅ……」

絶頂が近い事を表す栞。

香里はその濡れた声に背筋をゾクリとさせながら、膣内から舌を離し、笑顔で語りかけた。

「いいの、栞……。イっていいのよ? 」

秘部から顔を離し、頭を上げて横になっている栞を抱き締める。

片手では愛液を溢れさせている膣へと指を入れて、内を激しく責めたてる。

抱き締められ、香里の温もりを感じて秘部からの快感を受け入れた栞は、香里にきつく抱きついた。

「あぁっ! おねえちゃんっ! お姉ちゃん!」

涙混じりに自分を呼び、抱き締めてくる妹の唇に優しく口付けをする。

「栞……。好きよ、栞」

「あっ、あぁ……。おねえちゃ、おねえちゃぁんっ!」

甘い言葉を囁かれ、口付けを交わされた栞は、姉をきつく抱き締める。

そのまま、香里の誘うまま、栞は絶頂へと昇っていく。

「やぁっ! おねえちゃんだめぇっ! もうっ、もうっ……!!」

「いいのよ、栞。このまま……」

「やぁぁっ! んんんっ! もう、もう、おねぇ、ちゃぁんっ!!」

喘ぐ栞に再び口付け、膣を舐る指を激しく動かしながら、香里は親指で隠核を捻る。

グリ、と突き立った隠核をきつく捻られ、栞は絶頂へと押し上げられた。

「ああああぁっ! あああああ〜〜〜〜〜っ!!」

ビクリ、と激しく揺れ、腰をガクガクと震わせて香里にきつく抱きつく。

秘部に触れていた掌へはパシャ、と一気に溢れた愛液がかかる。

絶頂を楽しんでいる栞の、腕の中で震える栞の姿に、香里も背徳心を刺激されゾクゾクと小刻みに身体を震えさせた。









腕から離れ、ぐったりした栞は荒い息を吐いて瞳を閉じる。

零れる涙もそのままに、腕で隠す顔は濡れた女を表していた。

「栞……」

絶頂の気だるさに、栞は声に返事を出す事が出来ず、ただ瞳を開けてそちらを見る。

目の前に居たのは、自分の姉、香里だった。

「栞……。ねぇ、栞……」

声をかけ、ゆっくりとスカートの裾を上げる香里の姿は、とても扇情的だった。

自分とは違う、女として完成された身体は、妖艶な香りを漂わせ自身へと訴えかける。

上げられたスカートの奥からは、濡れそぼった秘部が露になっていた。

自分の前に膝立ちになり、自身の手で裾を捲り上げる香里に、栞は愛しさが込み上げてくる。

月の光を受け、濡れた秘部とそれをうっすらと覆う陰毛がキラキラと輝く。

胸の鼓動が高鳴り、息苦しさを栞は感じていた。

「ねぇ、栞。私を、愛して……」

「おねえ、ちゃん……」

姉からの愛の言葉に、擦れた声で返事を返す。

手を伸ばすと、震える身体を抱き締める。

優しく口付けをして、栞は姉の瞳を見つめる。

「……お姉ちゃん」













二人の戯れは、未だ始まったばかり。